【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。
情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古高等学校定時制 講師) 会員
情報提供日:2026年4月15日
連絡先 :TEL. 0193-63-6448
MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp
準備の段階
● 実践・実施のきっかけや経緯
東日本大震災発災から15年を経過し、震災当時生まれていなかった子供達が中学校や高校に入学してくる現在、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
● 計画や準備で気をつけたこと
東日本大震災が発生した2011年から2021年まで、被災地域にある5つの高校(宮古、久慈東、山田、岩泉、宮古北)において、2012年12月にインドネシアのアチェ州を取材したうえで『インド洋大津波と東日本大震災の比較』というタイトルで、防災・減災や復興、国際理解、環境問題等について情報を提供する授業やプリント学習を実施してきた。その中には、震災当時高校2年生だった生徒から保育園年長だった幼児まで(12学年分)の生徒達の震災時や震災復旧・復興時の想いや考えが、授業の内容をふまえた600字の小論文という形で多数記録されている。
これまで、多様な視点の小論文を現役の高校生に『朗読』してもらうことにより、被災した当時の子供達の想いや考え、そして感情が、読み手の生徒達はもちろん聴く側の生徒達により強く伝わる授業を実践してきた(2025年9月16日と2025年12月3日付けの【会員レポート】、2編を参照)。
今回、インド洋大津波や東日本大震災による被害状況、あるいは防災・減災、支援活動・国際協力などについてイメージしやすい工夫を加えた教材を作成した。
また、より『朗読』しやすい工夫、および『ワークショップ』のやり方などについても改良を加えたので、紹介する。
実践の段階
● 実施した内容
1) 作成した教材
中学生・高校生向け『写真付き教材』①【インド洋大津波と東日本大震災の比較】版(15編)(参考資料①)と、②【東日本大震災関連に限定】版(15編)(参考資料②)を作成した。
2) 工夫した内容
全ての小論文の1編ずつに2枚の写真が付いていることにより、『インド洋大津波(2004年発災)』や『東日本大震災(2011年発災)』等に対して、被災者である生徒達の想いや考え・感情などがイメージしやすくなっている。
また、地名や読み方が複数ある漢字等に「ふりがな」を付けたことで、『朗読』しやすくなっている。
3) 利用法
・実践例1(50分コース)
ⅰ) 掲載されている15編の中から9編を選び、配布する(「導入」を含め、約5分)。
ⅱ) 生徒もしくは教員が、配布した9編の小論文を『朗読』する(約20分)。
ⅲ) 各生徒が9編の中から1つの小論文を選んだうえで、以下の課題について簡単に書き出す
(約10分)。(別紙資料1『学校用』)
A:あなたが共感したのは、どういう所ですか?
B:あなたが選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?
ⅳ) 別紙資料1を参考にして、以下の課題を提出させる(約15分)(別紙資料2 『原稿
用紙』)。
または、宿題として後日提出とする。
A:(160字以上~200字以内で述べなさい。)
B:(260字以上~300字以内で述べなさい。)
ⅴ) 後日、提出された小論文のうちのいくつかを、選んだ小論文と一緒に掲載したプリントを
作成・配布し、参加生徒全員で想いや考えを共有する。
・実践例2(50分×2コース)
ⅰ) 震災学習や防災学習などの情報を提供(約30分)。
ⅱ) 掲載されている15編の中から9編を選び、配布する(約5分)。
ⅲ) 参加者(生徒等)もしくは開催者(教員等)が、配布した9編の小論文を『朗読』する
(約20分)。
ⅳ) 各生徒が9編の中から1つの小論文を選んだうえで、以下の課題について簡単に書き出す
(約10分)。(別紙資料1)
ⅴ) 選んだ小論文ごと、もしくは合併で数人の班を作り、『グループ討議資料』(別紙資料3)
に沿って話し合い、各班ごとに発表する(班分け:約5分、グループ討議・発表:約30
分)。
ⅴ‘)または、別紙資料2『原稿用紙』に記述(約35分)、提出後、実践例1の(ⅴ)と同様に
行い、参加生徒全員で想いや考えを共有する。
ⅴ“)または、小論文中の語句や『いわて震災津波アーカイブ~希望~』等を参考に、ネットを
使い「調べ学習」を各自、あるいは班で行い、後日発表する。(50分×4コース)
・実施上の留意点
1 心を込めて「朗読」するのは、中学生や高校生、または大学生等の若い世代が望ましい。
しかし、生徒による朗読が難しい等の状況によっては教員等による朗読でもよいし、各生徒の
黙読でもよい。
また、別紙資料2『原稿用紙』での提出は、長期休業中の課題としてもよい。
2 小論文1編の朗読に要する時間は、おおよそ1分40秒である。(朗読の前後に必要な
時間を加味すると、1編=約2分。)
3 朗読する小論文の数は、9~15編が適当であるので、「導入」や「グループ討議」等に
必要な時間を考慮して数を決める。(場合によっては、より少ない数の小論文に
限定してもよい。)
4 「グループ討議」と別紙資料2による「課題の提出」の両方を実施することが望ましいが、
片方だけの実施でもよい。
● 実践中や、実施後の参加者の反応
この教材を用いた授業はまだ実施していない。しかし、上記2編の【会員レポート】の際に実施していた『インド洋大津波と東日本大震災の比較』の授業が実施されなくても、今回各小論文に付けた2枚の写真を見ることにより、書いてくれた生徒達の想いや考え・感情について参加者がイメージしやすくなっていると思われる。そのため、今回工夫した『教材』は、「いつでも誰でも簡単に使用できる教材」になっていると考える。
また、掲載した小論文の中では、震災当時の自らの体験をふまえたうえでの教訓や、これからの自分に何ができるのか等について述べていることから、多くの参加者の共感を得ることができると考える。
継続の段階
● 課題に感じたこと
今回使用した写真の多くは、岩手県復興防災部復興推進課が管理する『いわて震災津波アーカイブ~希望~』(https://iwate-archive.pref.iwate.jp/)から二次利用したものである。引用した写真以外にも、今まで見たことがなかった貴重な写真や資料がたくさんあり、震災学習や防災・減災学習、支援活動・国際交流等、多くの分野で活用できると感じた。
その存在を知らない方も多いようなので、ぜひ、多くの方に活用していただきたいと強く思う。
● これからの期待や展望
この『教材』の利用方法はいろいろと考えられるが、共通するのは「東日本大震災を体験した子供達の想いや考え・感情を知ることができ、知ることにより『自分事』としてどのように行動していくのかを考える場を提供できる」ことである。
現在、「小学校高学年向け」と「小学校低学年向け」の教材を、震災当時に小学生や保育園児だった生徒の小論文(作文)を中心に選んで作成中である。また、防災・減災学習と共に日本語学習を一緒にできる外国人向けの「日本語学習用」教材を検討している。
加えて、「幼児向け」に、生徒達が書いてくれた小論文の内容を「絵本」や「紙芝居」にできないかを検討しているが、私だけの力では難しいので、「絵本」や「紙芝居」を作成するノウハウに詳しい方からのご連絡をお待ちしている。
● 実践中の写真
※写真の掲載についてご本人の許可をいただいています。



































