下記の期間、年末年始につき休業いたします。
2025年12月27日(土) から 2026年1月4日(日) まで
業務開始は1月5日(月)09:30からとなります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。

下記の期間、年末年始につき休業いたします。
2025年12月27日(土) から 2026年1月4日(日) まで
業務開始は1月5日(月)09:30からとなります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。
【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。
情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古高等学校定時制 講師) 会員
活動実施日:2025年10月2日
情報提供日:2025年11月27日
連絡先:TEL. 0193-63-6448
MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp
● 実践・実施のきっかけや経緯
東日本大震災発生当時、まだ小さかったり生まれていなかった子供達が高校へ入学してくることが予想され、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
一つの方法として、インド洋大津波と東日本大震災に関連する162編の小論文の中から選んだ多様な視点の60編の小論文を『教材』(参考資料①参照)とすることで、被災地の生徒達の想いや考えを現在や未来の中学生・高校生、あるいは震災を体験していない人々に引き継ぎ、新たな行動へつなげていきたいと考えている。
今回、盛岡中央高校通信制(全日型)において、118名(1年生41名、2年生30名、3年生47名)を対象に、「総合的な探究の時間」の中で「防災学習」としてこの『教材』を使用した。
● 計画や準備で気をつけたこと
元になる資料(2021年11月22日付けの【会員レポート】など9編を参照)は、岩手県沿岸の被災地にある5つの高校(宮古、山田、久慈東、岩泉、宮古北)において、震災当時高校2年生だった生徒から保育園・幼稚園の年長だった幼児まで(12学年分)の震災を体験した高校生が、震災時や震災復旧・復興時にどのように想い・考えたかを600字の小論文として記載したものである。
『教材』作成の準備で特に気を付けたのは、東日本大震災を体験した子供達の想いや考えが形として残るようにすること、そして「いつでも誰でも簡単に使用できる教材」とすることである。
● 実施した内容
1) 『インド洋大津波と東日本大震災の比較』の授業内容の紹介(約60分間)
東日本大震災の翌年(2012年)に、JICA東北主催の教師海外研修でインドネシア・アチェ州を訪れる機会を得た。当地は、2004年12月26日に発生したインド洋大津波(スマトラ島沖地震)の被災地で、アチェ州だけで約16万人が亡くなっている。この研修で得た知見や帰国後に調査した日本における「自然環境を活用した防災・減災」などをまとめ、スライドや動画上映を中心とした50分×2コマの授業を実施している。
今回、その授業内容(「アチェの状況」や「マングローブの役割」「日本の防災林」等)について約60分間に短縮して参加生徒達に紹介した。そのうえで、授業内容等の「振返りプリント」の作成・掲示・配布や、それらのプリントを参考にした「600字の小論文」の課題の提出を岩手県沿岸の5つの高校で実施したこと、そしてその中から今回12編を選んで生徒達に朗読してもらうことを説明した。
なお、「導入」に使うこの「授業内容の紹介」は、他の震災学習や防災学習等の情報提供に替えることも可能である。また、状況によっては東日本大震災に関する簡単な説明や動画を流す等の5分程度の短い「導入」でも良いと思われる。
この後、休憩(約10分間)
2) 現役高校生(盛岡中央高校単位制(全日型)の生徒12名)による小論文(12編)の朗読(約20分間)
今回、震災を体験した生徒達の小論文『12編』(参考資料②参照)について、1~3年生に朗読してもらった(1人各1編を朗読)。
朗読してもらった12編の小論文の選定は、できるだけ多様な視点と体験を含むことや、実際の体験から得られた教訓や提言を含むこと、等を考慮した。
盛岡中央高校の指導者の大越教諭に、朗読する際には「心を込めて」、「間を取って」、「ゆっくり」読む練習を前もって2,3回してもらうようにお願いしていたが、12名全員が聞く人達の心に響くとても心のこもった朗読をしてくれた。今回の実践からも、朗読するのは現役の高校生、もしくは中学生や大学生等の若い世代が良いと実感した。
3) ワークショップ(約30分間)
ⅰ)朗読してもらった12編の中から1編を各自選び、「A:あなたが共感したのは、どういう所
ですか?」と「B:選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?」、
および「感想」を、別紙用紙①に書き出してもらった。
ⅱ)その用紙をもとに、5~6人のグループごとに、別紙用紙②を使いながら、「これからあなた
ができることは何ですか?」について話し合ってもらった。(※ 別紙用紙②では、最初に
『クロスロード』を行い話し合いに慣れた後で、「この小論文のココに共感した。」、
「こんな体験をしたことがある。」、「こういう事をしてみたい。」、「こんな方法もある
のでは。」、「これが必要だ。」、「大船渡の山林火災の被災地に、こんなことができ
る。」、等々について意見を出し合う。)
ⅲ)話し合った内容について、各グループの代表者から短く発表してもらう予定であったが、
時間不足により割愛した。
4) 課題の配付
授業の最後に、別紙用紙③(「原稿用紙」)を配付し、朗読した12編の小論文の中から各自が選んだ1編について、「A:あなたが共感したのは、どういう所ですか?(160字以上~200字以内)」と「B:あなたが選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?(260字以上~300字以内)」について書き、後日提出してもらった。
5) 想いや考えの共有
後日、提出された小論文のうちのいくつかを、選んだ小論文と一緒に掲載したプリントを作成・配付し、参加生徒全員で想いや考えを共有した(参考資料③『想いや考えの共有』(11名分)参照)。
● 実践中や、実施後の参加者の反応
実施した内容の1)「授業内容の紹介」
「東日本大震災」と生徒たちがまだ生まれていない約21年前に発生した「インド洋大津波」を比較して紹介し、2つの自然災害の共通点や相違点を比較検討したことで、防災・減災や復興、国際支援活動等について興味深く聴いてくれていることを感じた。また、インドネシアのマングローブ林と日本の防災林を比較しながら「自然環境を活用した防災・減災」という視点からの防災・減災について紹介することにより、「身近な自然環境」の重要性を理解してもらうことができた。
なお、今回選定した12編の小論文の中には、インド洋大津波に関する「授業内容の紹介」を受けなければ伝わりにくい内容を含む小論文も2,3編あったが、それらを除いた『東日本大震災関連に限定編』(15編)も用意してあるので、この「授業内容の紹介」は必ず実施すべきものではないことに留意。
実施した内容の2)「小論文(12編)の朗読」
声に出して朗読することにより、被災した当時の子供達の想いや考え、そして感情が、読み手の生徒達に、より強く伝わったと思われる。
また、子供の頃に実際に東日本大震災を体験した地域の先輩たちの高校時代の想いや考え・感情を、同じ年代の現役の高校生達が「自分事」として思い浮かべながら朗読することにより、聴く側の生徒達にも「自分にも起こりうる事」と捉えやすくなり、強く響いたと思われる。(参考資料③参照)
実施した内容の3)「ワークショップ」
12編の小論文の中から自分の心に引っかかった1編を選び、それぞれが別紙用紙①に書き出した「この小論文のココに共感した」ことを話すことをきっかけとして、「こういう事をしてみたい」や「こんな方法もあるのでは」等々についてグループごとに活発に話し合っていた。
互いの考えや感じたことを話し合うことで、多様な視点から「自分がこれからできること」を考える良い機会になったと思われる。(参考資料③参照)
実施した内容の4)「課題の配付」と5)「想いや考えの共有」
ワークショップ後に、自分の心に引っかかった1編について自らが書き出した「共感したところ」と「これからできること」、加えてグループワークで話し合うことで気づいた事や閃いた事をまとめて文章化していく過程、及び「想いや考えの共有」により、防災意識の向上や災害への備え、そして「これから自分にできること」について深く考えることができたと思われる。
● 課題に感じたこと
ワークショップにどれ位の時間を取るのかについて、参加生徒の日頃の状況が分からないと設定が難しいということを感じた。今回、ワークショップの時間が不足し、最後に予定していた数グループからの発表を割愛せざるを得なかった。日頃から生徒達と接している指導者と、前もって可能な限り詳しい情報交換をする必要があると感じた。
学校で実施する場合、生徒達の事をよく知るその学校の指導者が、この『教材』の中にある「利用法」を参考に、自由にアレンジして使用することが望ましいと思われる。
● これからの期待や展望
この『教材』(15編×4セット=60編)は、【体験・生き方】や【体験・支援活動】などのテーマに合わせて必要数の小論文を選ぶことも可能である。あるいは、防災学習や復興学習・支援活動・国際理解・生き方・地域の特性・環境学習などに関する多様な小論文があるので、あるテーマに特化した情報提供やワークショップ等を行ったうえで、適する内容の小論文を必要数選び朗読することも可能である。
以上のように、この『教材』(参考資料①)の利用方法はいろいろと考えられる。共通するのは、「東日本大震災を体験した子供達の想いや考え・感情を知ることができ、知ることにより『自分事』としてどのように行動していくのかを考える場を提供できる」ことである。
● 実践中の写真
※写真の掲載についてご本人の許可をいただいています。
セミナー概要
いつ起きてもおかしくないとされている「首都直下地震」。発生が懸念される首都直下地震と地震に伴う火災で⼈々の暮らし、事業はどうなるのか。本セミナーでは、首都直下地震発生の被害想定をもとに、どのような被害がでるか、最近の地震の話とともに当協会の会⻑ 平⽥直 東京大学名誉教授が解説いたします。また、地震によって同時多発的に発生する地震火災について東京大学先端科学技術研究センターの廣井教授が講演いたします。パネルディスカッションでは、内閣府 首都直下地震対策検討ワーキンググループ主査・株式会社野村総合研究所の増⽥寛也氏をお招きし、首都圏の災害リスクとどう向き合い対応すべきかを考えます。また、企業の事業継続、⽇々の生活について、リスク策.comの編集⻑ 中澤 幸介氏を交えて討論します。
開催概要
日時 2026年1⽉22⽇(木)14時00分から17時30分 (13時半開場)
会 場 大⼿町サンケイプラザ
【主催】⼀般社団法⼈ 防災教育普及協会
【協⼒】公益財団法⼈⽇本法制学会・災害ボランティア推進委員会
【後援】⽇刊建設工業新聞社・⽇刊建設通信新聞社・毎⽇新聞社
【募集⼈員】80名 (⼀般)参加費10,000円 (会員)3,000円
参加申し込み 専用フォーム
※定員になり次第締め切り
プログラム
1. 基調講演 「首都直下地震」
一般社団法人防災教育普及協会 会長 平田 直
(東京大学 名誉教授)
2. 講演 「地震火災」
東京大学先端科学技術研究センター 教授 廣井 悠
(一般社団法人防災教育普及協会 理事)
3. パネルディスカッション
「巨⼤災害に備える ~巨⼤地震、広域⽕災から⽣命と事業を守るために~」
出演者
増田 寛也氏
内閣府首都直下地震ワーキンググループ 主査
中澤 幸介 氏
リスク対策.com 編集長
平田 直 ・ 廣井 悠
お申込み
下記、専用フォームからお申込みください。
締め切り 2026年1月16日(金)
※定員になり次第、締め切り
https://forms.gle/MtgTeQQMJVH2V1N3A


1.募集の概要
防災教育チャレンジプランは、いつやってくるかわからない災害に備え、大切な命を守り、できる限り被害を減らし、万が一被害にあったときでも、すぐに立ち直れる力を一人一人が身につけられるよう、全国の地域、学校、企業や民間組織などの様々な担い手が防災教育を推進するためのプランです。
採択されると、1年間にわたって、プランを実現するために「防災教育チャレンジプランアドバイザー」(防災教育チャレンジプラン実行委員や、サポーター(過去の実践団体))による知識・ノウハウの提供や現地活動の応援を受けたり、実践団体同士の交流会に出席したり、プランの準備・実践に当たって発生する経費が一部補助されたりといった、ヒト・コト・資金の支援を受けることができます。
2024年度からは、「新・防災教育チャレンジプラン」として再スタートし、時代に即した様々なチャレンジを募集しています。例えば、実行委員会としては、来年度は下記のようなテーマについてご応募いただければと考えていますが、もちろんこれ以外のテーマでも歓迎しますので、ふるってご応募ください。
①防災教育を定着させるためのチャレンジ
学校・地域・企業・組織の中で、防災教育を継続・定着させるためのチャレンジを歓迎します。既存のプログラムを活用したり、年間行事に取り入れたり、多様な主体と連携したりなど、様々な工夫を歓迎します。
②防災人材を育成するためのチャレンジ
災害を乗り越えるために、学校・地域・企業・組織など、様々な立場の人々について、どのような能力を上げるために、どのような教育・研修・訓練が必要なのかを提案・実践するチャレンジです。デジタル技術の活用なども歓迎します。
③火山防災教育のチャレンジ
2023年に活動火山対策特別措置法が改正され、2024年から火山調査研究推進本部が発足し、活火山の対策が一層強化されました。活動火山対策の更なる強化、推進を図るためにも、火山防災教育に関する取り組みを歓迎します。
2026年度からは「継続・定着枠」を 設け、学校・地域・企業・組織で既存の防災教育などを継続・定着させるためのチャレンジも応援します!
| サポート内容 | ■プランの実践にかかる経費の提供/ 上限 30 万円 ※提出いただいた応募企画書の内容をもとに、防災教育チャレンジプラン実行委員会の委員が審査を行います。審査の結果、ご要望の金額から減額となる可能性がございます。予めご了承ください。※経費は、実践活動終了後の「完了払い」となりますので、活動期間中は各実践団体での立て替えとなります。活動・予算計画書の提出及び団体名義の口座が必要となります。 ■プランの実現に向けて、下記サポート主体が対面・オンライン問わず 助言や現地指導等の支援を行います。 ■防災活動の手法・事例の収集と活動情報の発信ができる各種Webツールを提供します。 |
|---|---|
| サポート主体 | ■防災教育チャレンジプランアドバイザー ・防災教育チャレンジプラン実行委員 ・防災科学技術研究所研究員 ・サポーター(過去の実践団体) ・その他防災教育専門家等 ■防災教育チャレンジプラン実行委員会事務局 |
| 表彰 | ■活動プロセス及び成果に対して審査を行い、優秀な実践活動に対して、防災教育大賞・防災教育優秀賞・防災教育特別賞を決定し、 表彰状と盾を授与いたします。 ■防災教育チャレンジプラン「サポーター」として認定いたします。 |
詳しくは こちら または下記から募集リーフレットをご確認ください。
2.応募資格
● 防災教育を一層充実させたいと考えている教育・社会福祉施設(保育施設・幼稚園・学校等)、NPO、民間企業、個人、地域団体(民間事業所、各種団体)などどなたでも応募できます。
● 採用された場合は、開催予定の活動計画発表会、中間報告会、活動報告会の計3回の会合に出席できること。
● オンライン開催となった場合、参加可能なインターネット環境(通信回線、機材、アプリケーション等)を用意できること。
3.応募区分
A.学校(保育園・大学含) B.地域団体 C.民間団体 D.その他(個人等)
【 応募テーマの例 】
①「防災教育を継続・定着させるためのチャレンジ」
②「防災人材を育成するためのチャレンジ」
③「火山防災教育のチャレンジ」
④「その他のテーマ(①~③以外)」
※上記以外のテーマについても応募を歓迎します。①~③以外のテーマの場合、応募企画書においては「④その他のテーマ」の欄に〇をつけてください。
4.応募締切
2025年 11月28日(金) 15:00
5.応募方法
応募を希望される方は、以下より「応募企画書」の電子ファイルをダウンロードし、必要事項を記入の上、期日までに「防災教育チャレンジプラン実行委員会事務局」宛てにメール添付により送信してください。
送付先: cpinfo2865 (アットマーク) bosai-study.net
●「応募企画書」は こちら または下記からダウンロードしてください。
※応募企画書の提出および事務局からの応募受付完了メールをもって応募完了となります。
※土日祝日の受付を除き、応募後2~3日で事務局より応募受付完了メールを送付いたします。
(受付完了メールが届かない場合は、必ず事務局までご連絡ください。)
※1団体1申請が原則です。複数プランへの応募は(プランが違っても)できません。応募する場合は必ずいずれか一つのみに応募してください。
6.応募結果
「防災教育チャレンジプラン実行委員会」の選考により決定します。審査の結果は、事務局より郵送及びメールにて応募団体へご連絡します(応募締め切り後1ヶ月程度)。
※メールが正しく受信できないことによる連絡の遅れ等について事務局では責任を負いかねますので、事務局からのメールが受信、確認できる環境でご応募ください(迷惑メールフォルダ等のご確認もお願いします)。
| 審査の観点 | ■プラン実施により地域防災力の向上に貢献できること ■応募された防災教育プランの有効性・新規性 ■活動の中に新しいチャレンジの要素が含まれているもの |
|---|---|
| 決定発表後の流れ | ■当年度の活動報告会において、次年度チャレンジプランの計画を発表いただきます。 |
7.応募用紙提出先・お問い合わせ
防災教育チャレンジプラン実行委員会事務局
cpinfo2865(アットマーク)bosai-study.net
※ 受領確認のご連絡にはお時間をいただく場合がございます。
※ お問い合わせは メールフォーム をご利用ください。
カテゴリ:お知らせ,トピックス,募集,防災教育チャンレンジプラン
【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。
情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古高等学校定時制 講師) 会員
活動実施日:2025年5月27日
情報提供日:2025年9月5日
連絡先:TEL. 0193-63-6448
MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp
● 実践・実施のきっかけや経緯
東日本大震災発生当時、まだ小さかったり生まれていなかった子供達が高校へ入学してくることが予想され、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
一つの方法として、インド洋大津波と東日本大震災に関連する162編の小論文の中から選んだ多様な視点の60編の小論文を『教材』(参考資料①参照)とすることで、被災地の生徒達の想いや考えを現在や未来の中学生・高校生、あるいは震災を体験していない人々に引き継ぎ、新たな行動へつなげていきたいと考えている。
今回、岩手県立久慈翔北高校において、介護福祉コース19名(2年生8名、3年生11名)と岩手県立北桜高校介護福祉コース11名(2年生)の「交流学習スクール」、および「いわての復興教育スクール」の一環として行われた震災学習(タイトル:「東日本大震災を経験した高校生たちの思いを継ぐ」)で、初めてこの『教材』を使用した。
● 計画や準備で気をつけたこと
元になる資料(2021年11月22日付けの【会員レポート】など8編を参照)は、岩手県沿岸の被災地にある5つの高校(宮古、山田、久慈東、岩泉、宮古北)において、震災当時高校2年生だった生徒から保育園・幼稚園の年長だった幼児まで(12学年分)の震災を体験した高校生が、震災時や震災復旧・復興時にどのように想い・考えたかを600字の小論文として記載したものである。
震災学習を実施するにあたり、指導しなければならない立場の方から「何をしたら良いか分からない」ということを聞くことがある。また、震災から7年後に、当時高校1年生の生徒が小論文の中で以下のように述べている。
「(前略)・・小学校の先生が3月11日になると津波の話をするそうですが、経験をしていない子供達や記憶がほとんどない子供達にどのように東日本大震災の事を伝えようか戸惑うらしいです。また、当時内陸の方の小学校に勤務していた先生方も多く、子供達に当時どのような事があったのかを伝える人も少なくなってきているそうです。・・(後略)」。その生徒は続けて、「高校生の私達や中学生が、・・説明したり、その時の気持ちなどを分かりやすく語ったりして、・・」と述べている。
岩手県では、『岩手の復興教育推進事業』の中で、「岩手の復興教育スクール」と「交流学習スクール」「震災学習列車活用スクール」という形で震災学習・防災教育を実施しているが、予算の確保や実施計画の作成等、指導者の負担が大きいのではないかと懸念される。また、震災学習を指導する側も年齢を重ねていくため、いつか指導できなくなり、震災を体験した子供達も高校を卒業していくため、後輩達に伝えることができなくなっている。
以上のことから、東日本大震災を体験した子供達の想いや考えが形として残るように、そして「いつでも誰でも簡単に使用できる」ことを常に心がけて『教材』を作成した。
● 実施した内容
1) 『インド洋大津波と東日本大震災の比較』の授業内容の紹介(約45分間)
東日本大震災の翌年(2012年)に、JICA東北主催の教師海外研修でインドネシア・アチェ州を訪れる機会を得た。当地は、2004年12月26日に発生したインド洋大津波(スマトラ島沖地震)の被災地で、アチェ州だけで約16万人が亡くなっている。この研修で得た知見や帰国後に調査した日本における「自然環境を活用した防災・減災」などをまとめ、スライドや動画上映を中心とした50分×2コマの授業を実施している。
今回、その授業内容(「アチェの状況」や「マングローブの役割」「日本の防災林」等)について約45分間に短縮して参加生徒達に紹介した。そのうえで、授業内容等の「振返りプリント」の作成・掲示・配布や、それらのプリントを参考にした「600字の小論文」の課題の提出を岩手県沿岸の5つの高校で実施したことを説明した。
2) 現役高校生(久慈翔北高校生8名)による小論文(9編)の朗読(約20分間)
今回、8年前に久慈東高校(久慈翔北高校の前身)で実施した出前授業の際に生徒達に書いてもらった小論文3編を含む『9編』(参考資料②参照)について、久慈翔北高校介護福祉コース2年生の8名に朗読してもらった(1人各1編、1人だけ2編朗読)。
3) ワークショップ(計30名参加) ~ファシリテーター:久慈翔北高校 菅原彩教諭~(約30分間)
ⅰ)朗読してもらった9編の中から1編を各自選び、「A:あなたが共感したのは、どういう所ですか?」と「B:選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?」、および「感想」(参考資料③『朗読された小論文の感想』参照)を、別紙用紙①に書き出してもらった。
ⅱ)その用紙をもとに、4~5人のグループごとに、別紙用紙②を使いながら、「これからあなたができることは何ですか?」について話し合ってもらった。
(※ 別紙用紙②では、最初に「クロスロード」を行い話し合いに慣れた後で、「私もこんな体験をした。」、「こんなことをしたい。」、「こんなことをしている。」、「こんな方法もある。」、「能登半島地震、洪水の被災地にこんなことができる。」、等々について意見を出し合う。)
ⅲ) 話し合った内容について、各グループの代表者から短く発表してもらった。
4) 課題の配付
授業の最後に、別紙用紙③(「原稿用紙」)を配付し、朗読した9編の小論文の中から各自が選んだ1編について、「A:あなたが共感したのは、どういう所ですか?(160字以上~200字以内)」と「B:あなたが選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?(260字以上~300字以内)」について書き、後日提出してもらった。
5) 想いや考えの共有
後日、提出された小論文のうちのいくつかを、選んだ小論文と一緒に掲載したプリントを作成・配付し、参加生徒全員で想いや考えを共有した(参考資料④『想いや考えの共有』参照)。
● 実践中や、実施後の参加者の反応
実施した内容の1)「授業内容の紹介」
「東日本大震災」と生徒たちがまだ生まれていない約20年前に発生した「インド洋大津波」を比較して紹介し、2つの自然災害の共通点や相違点を比較検討したことで、防災・減災や復興、国際支援活動等について興味深く聴いてくれていることを感じた。また、インドネシアのマングローブ林と日本の防災林を比較しながら「自然環境を活用した防災・減災」という視点からの防災・減災について紹介することにより、「身近な自然環境」の重要性を理解してもらうことができた。
実施した内容の2)「小論文(9編)の朗読」
声に出して朗読することにより、被災した当時の子供達の想いや考え、そして感情が、読み手の生徒達に、より強く伝わったと思われる。たとえば、当日の震災学習を取材していたNHK盛岡放送局制作の放映番組の中で、朗読した生徒の一人が『言葉ひとつひとつに 想いがちゃんとあるんだなって思いながら読むことで 気持ちをくみ取って読もうと思いました。』と述べている。
また、子供の頃に実際に東日本大震災を体験した地域の先輩たちの高校時代の想いや考え・感情を、同じ年頃の現役の高校生達が「自分事」として思い浮かべながら朗読することにより、聴く側の生徒達にも強く響いたと思われる。(参考資料③・④、および⑤(新聞記事):『岩手日報』令和7年6月4日付より「岩手日報社の許諾を得て転載しています。」)
実施した内容の3)「ワークショップ」
9編の小論文の中から自分の心に引っかかった1編を選び、「共感したところ」と「これからできること」を書き出したことで、グループワークにおける発言がスムーズになったと思われる。また、互いの考えや感じたことを話し合い、多様な視点から「自分がこれからできること」を考える良い機会になったと思われる。
講師の話を聞いて「分かったつもり」になるのではなく、地域の先輩たちの想いや考え・感情を理解したうえで、グループワークの中で互いの考えや感じたことを話し合うことは、より理解を深め、次なる行動へつながるものになると考える。
実施した内容の4)「課題の配付」と5)「想いや考えの共有」
ワークショップの最後に各グループからの短い発表はあったが、形として残らないと「想いや考えの共有」は難しいと思われる。ワークショップ後に、自分の心に引っかかった1編について自らが書き出した「共感したところ」と「これからできること」、そしてグループワークで話し合うことで気づいた事や閃いた事をまとめて文章にしていく過程が重要である。
● 課題に感じたこと
今回の実践からも、朗読するのは現役の高校生、もしくは中学生であることが望ましいと感じた。
しかしながら、例えばこの『教材』を朗読することが困難な生徒がたくさんいるクラスで実施する場合や、NPO等が一般の参加者を対象に実施する場合等、それが難しい場合が想定される。前者の場合には、朗読ではなく黙読、あるいは教師が朗読してから“実施した内容の4)「課題の配付」と5)「想いや考えの共有」”を実施する方法や、後者の場合には、主催者が朗読してからワークショップを実施する方法でも良いと思われる。
現在、現役高校生等の朗読を録音しておいた音源を利用することができるように準備し、現場で流すという方法も試してみたいと考えている。
● これからの期待や展望
東日本大震災の被災地だけではなく、どの地域の誰でも簡単に利用できる『教材』にしたいと考えている。“実施した内容の1)「授業内容の紹介」”を実施しないで、最初から朗読とワークショップを行うことも可能である。また、最初から朗読して、ワークショップなしで“実施した内容の4)「課題の配付」と5)「想いや考えの共有」”を実施することも可能である。
この『教材』(15編×4セット=60編)は、【体験・生き方】や【体験・支援活動】などのテーマに合わせて必要数の小論文を選ぶことも可能である。あるいは、防災学習や復興学習・支援活動・国際理解・生き方・地域の特性・環境学習などに関する小論文があるので、あるテーマに特化した情報提供やワークショップ等を行ったうえで、適する内容の小論文を選び朗読することも可能である。
以上のように、この『教材』の利用方法はいろいろと考えられる。共通するのは、「東日本大震災を体験した子供達の想いや考え・感情を知ることができ、知ることにより『自分事』としてどのように行動していくのかを考える場を提供できる」ことである。
もし、この『教材』(参考資料①)の電子データが欲しい方がいれば、ptf60-j-ogasawara(アット)iwate-ed.jp まで連絡をください。メール添付で(別紙用紙①~③も含めて)提供できます。
また、【特別セレクト①】(15編)や【特別セレクト②】(15編)、【体験・支援活動編】(15編)や【体験・環境編】(12編)、そしてインド洋大津波に関する「授業内容の紹介」を受けなければ伝わりにくい内容を含む小論文を除いた【東日本大震災関連に限定編】(15編)もあるので、お問い合わせください。
● 実践中の写真
※写真の掲載についてご本人の許可をいただいています。
2016年6月公開
2025年10月更新
防災教育に関する教材やゲームにはいろいろな種類のものが開発されています。個人やNPO法人、民間企業、消防局や都道府県まで開発者も様々です。市販されている教材もあれば、無料でダウンロードできるものもあります。
本記事では学校・地域での防災教育や研修・講座・イベント等で活用されている防災教育教材・防災ゲーム等の一覧をご紹介します。
それぞれ開発者・販売サイト等にリンクしていますが、ホームページの変更等によりリンクが切れる場合や、販売・公開が中止となる場合があります。
本ページに関するお問い合わせは下記専用フォームよりお知らせください。
注意事項と対象別分類について
防災教育教材やゲームは、学習テーマや目的、実施環境に合わせて使用することが重要です。
教材やゲームの内容は繰り返し実践してみなければ分からない点も多いため、本記事で紹介する防災ゲーム・教材、資料はすべて筆者(防災教育普及協会教育事業部長・宮﨑賢哉)が児童生徒や一般の方を対象に、学校・地域・イベント等で実践した経験に基づいて整理しています。
すべての防災ゲームを網羅しているわけではないことをご了承ください(筆者が実践経験のない防災ゲームや教材、資料などは紹介していません)。
各教材の対象者・実施環境別のオススメゲーム等は以下の記事をご覧ください。
地震・津波災害、火災等への備え、災害時の対応全般
防災すごろくゲーム「GURAGURA TOWN」|NPO法人プラス・アーツ
幼児向け防災教育用カードゲーム「ぼうさいダック」|(一社)日本損害保険協会
津波防災カードゲーム「FLAGO(ふらご)」|一般社団法人防災ガール
※法人解散のため、現在購入できません。詳細ご希望の方は弊会までお問い合わせください。
防災ボードゲーム「RESQ+」|明石高専防災団
※オリジナルの「RESQ」をつくることができます。
乳幼児・児童向け防災体験プログラムリスト[PDF]|宮﨑賢哉(防災教育普及協会)
風水害への備え、避難行動
小中学生向けマイ・タイムライン~逃げキッド~|国土交通省関東地方整備局下館河川事務所
防災教育教材「避難行動訓練EVAG(豪雨災害編)」|国土防災技術株式会社
ワークショップ教材「経験したことのない大雨、その時どうする?」|気象庁
防災啓発ビデオほか指導教材「急な大雨・雷・竜巻から身を守ろう!」|気象庁
避難所運営、避難誘導、帰宅困難者対応
帰宅困難者支援施設運営ゲーム「KUG」|東京大学大学院工学系研究科廣井研究室
防災グッズ、非常持ち出し袋の確認
カードで学ぶ非常持ち出し袋|神戸学院大学防災・社会貢献ユニット
災害時の情報収集・伝達・コミュニケーション
災害対応シミュレーションゲーム「ダイレクトロード」|神戸市消防局
災害対応カードゲーム教材「クロスロード」|チームクロスロード
災害情報&コミュニケーション演習「DICE」|宮﨑賢哉(防災教育普及協会)
災害状況を想像する・イメージトレーニング
災害状況イメージトレーニングツール「目黒巻」|東京大学生産技術研究所目黒研究室
災害状況を想像する力を身につけよう|宮﨑賢哉(防災教育普及協会)
地域の防災全般、災害トイレ、福祉と防災、ペット防災、災害医療等
災害想定ゲーム「KIZUKI」|NPO法人高齢者住まいる研究会
※福祉施設の災害対応を学ぶ対戦型のシミュレーションゲーム
人形劇「カンカン塔の見はり番」|TOA株式会社
※電子ブック、人形劇などで学ぶ音の防災
小学生向け防災教育プログラム「ぼうさい探険隊」|(一社)日本損害保険協会
災害時のトイレアクションを考えよう|NPO法人日本トイレ研究所(リンク先は弊会)
発達障害児向けiPad教材「スキナのセレク島」|パステルハートプロジェクト
障害者の災害対策チェックキット|国立障害者リハビリテーションセンター研究所
ぱるけの紙芝居|アフタースクールぱるけ
※障がい児保護者・支援者に向けた「受援力・支援力」を知るための紙芝居
ペット防災カードゲーム「いっしょに逃げてもいいのかな」|LEONIMAL
教材・資料集、指導案集、手引きなど
おうちでぼうさいをまなぼう!コンテンツ|名古屋市港防災センター
※チェックリスト、カルタ、ペーパークラフトなど多彩なコンテンツがあります。
防災教育ポータル|国土交通省
※防災教育に役立つ動画や各種教材がダウンロードできます。
まもるいのち ひろめるぼうさい(資料・指導案集)|日本赤十字社
※ページ後半に記載
防災ノート~災害と安全~(小中高校版)防災教育ポータル|東京都
防災学習ブック(小中高校版)ほか各種教材|明石スクールユニフォームカンパニー
地域における防災教育の実践に関する手引き|内閣府(防災担当)
体験イベントの様子
体験イベントの様子については、下記でご紹介していますので、教材やゲームの使用イメージを確認したい方はぜひご覧ください。
カテゴリ:教材・事例紹介
学校防災を考える会では、9月13日(土)16:00より第13回研修会を開催。
普段は会員限定の研修会ですが、今回特別に一般公開とし平田直講演会を開催します。
お申込み概要
日 時: 2025年9月13日(土) 16:00
会 場: ハリウッド大学院大学 港区六本木6-4-1
六本木ヒルズ ※日比谷線六本木駅直結
内 容: 一般社団法人防災教育普及協会 会長 平田直先生のご講演
地震を知って震災に備える
参加費 : 1,000 円
参加申し込み 以下のフォームよりお申込みください。
https://forms.gle/NWbNvRCVmhx2TiLj9
主 催 : 学校防災を考える会
