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【会員レポート】『東日本大震災を体験した子供達の想い・考えを、次世代に伝える教材』 実践例③(~大学生対象の実践~)

【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。

 


 

情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古高等学校定時制 講師) 会員
活動実施日:2025年11月5日
情報提供日:2026年1月20日
連絡先:TEL. 0193-63-6448
    MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp

 

準備の段階

 

● 実践・実施のきっかけや経緯

 東日本大震災発生当時、まだ小さかったり生まれていなかった子供達が高校へ入学してくることが予想され、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
 一つの方法として、インド洋大津波と東日本大震災に関連する162編の小論文の中から選んだ多様な視点の60編の小論文を『教材』参考資料①参照)とすることで、被災地の生徒達の想いや考えを現在や未来の中学生・高校生、あるいは震災を体験していない人々に引き継ぎ、新たな行動へつなげていきたいと考えている。
 今回、千葉大学園芸学部の加藤ゼミの学生(大学3・4年生、大学院修士・博士課程、計25名)を対象に、この『教材』を使用して、防災学習を実施した。
 きっかけは、NHK盛岡放送局が制作した番組(2025年5月27日に久慈翔北高校で実施した出前授業等を取材・編集)を視聴した森林火災が専門の千葉大学の加藤顕准教授から、「これから大船渡など火災があった場所で研究活動をする予定です。調査に入る前に、大学生に災害で被害に遭った方の気持ちを感じてもらいたいのと、防災の意識も高めたい」という趣旨の依頼があったことである。

● 計画や準備で気をつけたこと

 元になる資料は、岩手県沿岸の被災地にある5つの高校(宮古、山田、久慈東、岩泉、宮古北)において、震災当時高校2年生だった生徒から保育園・幼稚園の年長だった幼児まで(12学年分)の震災を体験した高校生が、震災時や震災復旧・復興時にどのように想い・考えたかを約600字の小論文として記載したものである。
 『教材』作成の準備で特に気を付けたのは、東日本大震災を体験した子供達の想いや考えが形として残るようにすること、そして「いつでも誰でも簡単に使用できる教材」とすることである。

 

実践の段階

 

● 実施した内容

1) 『インド洋大津波と東日本大震災の比較』の授業内容の紹介(約60分間)

 東日本大震災の翌年(2012年)に、JICA東北主催の教師海外研修でインドネシア・アチェ州を訪れる機会を得た。当地は、2004年12月26日に発災したインド洋大津波(スマトラ島沖地震)の被災地で、アチェ州だけで約16万人が亡くなっている。この研修で得た知見や帰国後に調査した日本における「自然環境を活用した防災・減災」などをまとめ、スライドや動画上映を中心とした50分×2コマの授業を実施している。
 今回、その授業内容(「アチェの状況」や「マングローブの役割」「日本の防災林」等)について約60分間に短縮して学生達に紹介した。

2) 加藤ゼミの学生(大学生、大学院生)による小論文(12編)の朗読(約20分間)

 今回、震災を体験した生徒達の小論文60編(参考資料①)の中から『12編』参考資料②参照)を選び、加藤ゼミの学生に朗読してもらった(1人各1編を朗読)。
 読んでもらった12編の小論文の選定基準は、以下のⅰ)~ⅲ)の3つの観点による。
 ⅰ)できるだけ多様な視点と体験を含むこと。
 ⅱ)加藤先生から依頼された「大学生に災害で被害に遭った方の気持ちを感じてもらいたい」
   という趣旨に沿っていること。
 ⅲ)被災体験をふまえた「身近な自然環境を活用した防災・減災」に関する生徒達の提言を
   含むこと。

ワークショップ

 今回、1)の「授業内容の紹介」に時間がかかり、また、「マングローブの役割」と「日本の防災林」に関する内容が、加藤ゼミの学生達の研究内容に関連する部分もあったため、急遽「質疑応答」という形に変更になり、ワークショップは実施しなかった。

課題の配付 5) 想いや考えの共有

 加藤ゼミにおいて専門的に「森林生態学」や「景観生態学」を学んでいる学生達には、「課題の提出」や「想いや考えの共有」は必要ないと感じ、実施しなかった。

● 実践中や、実施後の参加者の反応

 実施した内容の1)「授業内容の紹介」

 「東日本大震災」と約21年前に発災した「インド洋大津波」を比較して紹介し、2つの自然災害の共通点や相違点を比較検討したことで、防災・減災や復興、国際支援活動等について興味深く聴いてくれていることを感じた。
 また、インドネシアのマングローブ林と日本の防災林を比較しながら「自然環境を活用した防災・減災」という視点からの防災・減災について紹介することにより、「身近な自然環境」の重要性を理解してもらうことができた。
 北海道出身の学生Aさんからは、「自分の卒論研究を海岸林について研究したいと思うようになった。小笠原先生から見せて頂いたいろいろな防潮事例を拝見して、自分の研究で役立つと感じた。」という感想をいただいた。
 また、当日参加していた澤田義人千葉大学客員准教授(JAXA『宇宙航空研究開発機構』において“植生観測に特化した人工衛星の開発に携わっている”先生)からは、「人工物と自然物を組み合わせた防災などは、お聴きして大変示唆に富むものでした」、「現在開発中の衛星が皆さまの財産と生命を守る一助になればとの思いを、今日は新たにしました」等の感想を寄せて頂いた。

実施した内容の2)「小論文(12編)の朗読」

 声に出して朗読することにより、被災した当時の子供達の想いや考え、そして感情が、読み手の学生達に、より強く伝わったと思われる。また、被災した子供達と同じ世代の聞く側の学生達にも「自分にも起こりうる事」と捉えやすくなり、強く響いたと思われる。
 関西出身の学生Bさんからは、「東日本大震災の時に関西は全く揺れなかったので、震災が起きたこともニュースでしか分からなかった。今回参加して、自分の事として感じられて良かった。南海トラフ巨大地震が起きたらと思うと心配だ。」という感想を、福島出身の学生Cさんからは、「福島で震災に遭ったので、自分に起きたことを思い出した。自分の実家は海岸近くではなかったので、津波による影響はなかったが、震災のことは時間と共に忘れてしまうので、このような機会があって本当に良かった。南海トラフ巨大地震への備えはどうしたら良いか? と考えた。」という感想をいただいた。
 また、加藤先生からは、「生徒の書いた文章が、どれも心に響くものばかりでした」、「伝承は被災者本人でなくても、別の人が文章を読み伝えることも大事だと私は思っております」、「今日の講義でも読み伝える重要性を改めて感じております」等の感想を寄せて頂いた。
 加藤先生からの「大学生に災害で被害に遭った方の気持ちを感じてもらいたい」という依頼に応えることができたと思うと共に、被災した方の気持ちを考えない「心のない研究者にはなってほしくない」という学生への教育方針に感銘を受けた

継続の段階

 

● 課題に感じたこと

 大学生を対象とする場合、専門性が高いことが予想される。今回のように「森林生態学」や「景観生態学」を専門的に学び研究している学生の場合、進路が未定の中高生むけに考えたワークショップでは物足りないだろうということを感じた。「防災・減災」や「支援活動」、あるいは「復興教育」や「国際交流」等を専門的に学び研究している学生を対象とする場合にも、同様のことが考えられる。
 そのような場合には、小論文を朗読することで「被災者の気持ち」を想い、感じてもらったうえで、その「被災者の気持ち」を専門的な研究の中にどのように落とし込むのかを話し合う形が良いと考える。

● これからの期待や展望

 この『教材』(15編×4セット=60編)の特徴は、東日本大震災当時、高校2年生から保育園・幼稚園の年長までの12学年分に相当する子供達が、高校生の時のいろいろな「想いや考え・感情」を表現したということである。そして、その小論文を若い世代が『朗読』することで、「想いや考え・感情」を共有できることである。
 東日本大震災からまもなく15年になり、震災記憶の風化が進んでいることを感じている人は多いと思われる。時の流れにより風化が進むのは仕方がない、と諦めてしまう人もいるかも知れない。しかし、津波による甚大な被害を何度も繰り返し受けてきた三陸地域で伝わる「津波てんでんこ」のように、あるいは文字としては記録されていない百十数年前に発災した大津波の記録を口承文芸として伝承してきたインドネシア・シムル島の「スモン」のように、先人の被災体験や教訓が伝わったことで助かった命がたくさんあるという事実を忘れてはいけない。
 原爆詩の『朗読』を続けている吉永小百合さんの活動や、ひめゆり平和祈念資料館等で行われている元学徒の体験を綴った手記や絵本の『朗読』は、聴く人の感情に強く訴える。
 東日本大震災の被災者である子供達の「想いや考え・感情」は、『朗読』することにより共有することができ、そしてそれは被災体験や教訓を未来へ引き継いでいくための有効な方法の一つであると考える。

 

 

 

● 実践中の写真

※写真の掲載についてご本人の許可をいただいています。

           

【会員レポート】『東日本大震災を体験した子供達の想い・考えを、次世代に伝える教材』 実践例②

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情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古高等学校定時制 講師) 会員
活動実施日:2025年10月2日
情報提供日:2025年11月27日
連絡先:TEL. 0193-63-6448
    MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp

 

準備の段階

 

● 実践・実施のきっかけや経緯

 東日本大震災発生当時、まだ小さかったり生まれていなかった子供達が高校へ入学してくることが予想され、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
 一つの方法として、インド洋大津波と東日本大震災に関連する162編の小論文の中から選んだ多様な視点の60編の小論文を『教材』参考資料①参照)とすることで、被災地の生徒達の想いや考えを現在や未来の中学生・高校生、あるいは震災を体験していない人々に引き継ぎ、新たな行動へつなげていきたいと考えている。
 今回、盛岡中央高校通信制(全日型)において、118名(1年生41名、2年生30名、3年生47名)を対象に、「総合的な探究の時間」の中で「防災学習」としてこの『教材』を使用した。

● 計画や準備で気をつけたこと

 元になる資料(2021年11月22日付けの【会員レポート】など9編を参照)は、岩手県沿岸の被災地にある5つの高校(宮古、山田、久慈東、岩泉、宮古北)において、震災当時高校2年生だった生徒から保育園・幼稚園の年長だった幼児まで(12学年分)の震災を体験した高校生が、震災時や震災復旧・復興時にどのように想い・考えたかを600字の小論文として記載したものである。
 『教材』作成の準備で特に気を付けたのは、東日本大震災を体験した子供達の想いや考えが形として残るようにすること、そして「いつでも誰でも簡単に使用できる教材」とすることである。

 

実践の段階

 

● 実施した内容

1) 『インド洋大津波と東日本大震災の比較』の授業内容の紹介(約60分間)

 東日本大震災の翌年(2012年)に、JICA東北主催の教師海外研修でインドネシア・アチェ州を訪れる機会を得た。当地は、2004年12月26日に発生したインド洋大津波(スマトラ島沖地震)の被災地で、アチェ州だけで約16万人が亡くなっている。この研修で得た知見や帰国後に調査した日本における「自然環境を活用した防災・減災」などをまとめ、スライドや動画上映を中心とした50分×2コマの授業を実施している。
 今回、その授業内容(「アチェの状況」や「マングローブの役割」「日本の防災林」等)について約60分間に短縮して参加生徒達に紹介した。そのうえで、授業内容等の「振返りプリント」の作成・掲示・配布や、それらのプリントを参考にした「600字の小論文」の課題の提出を岩手県沿岸の5つの高校で実施したこと、そしてその中から今回12編を選んで生徒達に朗読してもらうことを説明した。
 なお、「導入」に使うこの「授業内容の紹介」は、他の震災学習や防災学習等の情報提供に替えることも可能である。また、状況によっては東日本大震災に関する簡単な説明や動画を流す等の5分程度の短い「導入」でも良いと思われる。
 この後、休憩(約10分間)

2) 現役高校生(盛岡中央高校単位制(全日型)の生徒12名)による小論文(12編)の朗読(約20分間)

 今回、震災を体験した生徒達の小論文『12編』参考資料②参照)について、1~3年生に朗読してもらった(1人各1編を朗読)。
 朗読してもらった12編の小論文の選定は、できるだけ多様な視点と体験を含むことや、実際の体験から得られた教訓や提言を含むこと、等を考慮した。
 盛岡中央高校の指導者の大越教諭に、朗読する際には「心を込めて」、「間を取って」、「ゆっくり」読む練習を前もって2,3回してもらうようにお願いしていたが、12名全員が聞く人達の心に響くとても心のこもった朗読をしてくれた。今回の実践からも、朗読するのは現役の高校生、もしくは中学生や大学生等の若い世代が良いと実感した。

ワークショップ(約30分間)

ⅰ)朗読してもらった12編の中から1編を各自選び、「A:あなたが共感したのは、どういう所
  ですか?」と「B:選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?」、
  および「感想」を、別紙用紙①に書き出してもらった。
ⅱ)その用紙をもとに、5~6人のグループごとに、別紙用紙②を使いながら、「これからあなた
  ができることは何ですか?」について話し合ってもらった。(※ 別紙用紙②では、最初に
  『クロスロード』を行い話し合いに慣れた後で、「この小論文のココに共感した。」、
  「こんな体験をしたことがある。」、「こういう事をしてみたい。」、「こんな方法もある
  のでは。」、「これが必要だ。」、「大船渡の山林火災の被災地に、こんなことができ
  る。」、等々について意見を出し合う。)
ⅲ)話し合った内容について、各グループの代表者から短く発表してもらう予定であったが、
  時間不足により割愛した。

課題の配付

 授業の最後に、別紙用紙③(「原稿用紙」)を配付し、朗読した12編の小論文の中から各自が選んだ1編について、「A:あなたが共感したのは、どういう所ですか?(160字以上~200字以内)」と「B:あなたが選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?(260字以上~300字以内)」について書き、後日提出してもらった。

) 想いや考えの共有

 後日、提出された小論文のうちのいくつかを、選んだ小論文と一緒に掲載したプリントを作成・配付し、参加生徒全員で想いや考えを共有した(参考資料③『想いや考えの共有』(11名分)参照)。

 

● 実践中や、実施後の参加者の反応

 実施した内容の1)「授業内容の紹介」

 「東日本大震災」と生徒たちがまだ生まれていない約21年前に発生した「インド洋大津波」を比較して紹介し、2つの自然災害の共通点や相違点を比較検討したことで、防災・減災や復興、国際支援活動等について興味深く聴いてくれていることを感じた。また、インドネシアのマングローブ林と日本の防災林を比較しながら「自然環境を活用した防災・減災」という視点からの防災・減災について紹介することにより、「身近な自然環境」の重要性を理解してもらうことができた。
 なお、今回選定した12編の小論文の中には、インド洋大津波に関する「授業内容の紹介」を受けなければ伝わりにくい内容を含む小論文も2,3編あったが、それらを除いた『東日本大震災関連に限定編』(15編)も用意してあるので、この「授業内容の紹介」は必ず実施すべきものではないことに留意。

実施した内容の2)「小論文(12編)の朗読」

 声に出して朗読することにより、被災した当時の子供達の想いや考え、そして感情が、読み手の生徒達に、より強く伝わったと思われる。
 また、子供の頃に実際に東日本大震災を体験した地域の先輩たちの高校時代の想いや考え・感情を、同じ年代の現役の高校生達が「自分事」として思い浮かべながら朗読することにより、聴く側の生徒達にも「自分にも起こりうる事」と捉えやすくなり、強く響いたと思われる。(参考資料③参照)

実施した内容の3)「ワークショップ」

 12編の小論文の中から自分の心に引っかかった1編を選び、それぞれが別紙用紙①に書き出した「この小論文のココに共感した」ことを話すことをきっかけとして、「こういう事をしてみたい」や「こんな方法もあるのでは」等々についてグループごとに活発に話し合っていた。
 互いの考えや感じたことを話し合うことで、多様な視点から「自分がこれからできること」を考える良い機会になったと思われる。(参考資料③参照)

実施した内容の4)「課題の配付」と5)「想いや考えの共有」

 ワークショップ後に、自分の心に引っかかった1編について自らが書き出した「共感したところ」と「これからできること」、加えてグループワークで話し合うことで気づいた事や閃いた事をまとめて文章化していく過程、及び「想いや考えの共有」により、防災意識の向上や災害への備え、そして「これから自分にできること」について深く考えることができたと思われる。

継続の段階

 

● 課題に感じたこと

 ワークショップにどれ位の時間を取るのかについて、参加生徒の日頃の状況が分からないと設定が難しいということを感じた。今回、ワークショップの時間が不足し、最後に予定していた数グループからの発表を割愛せざるを得なかった。日頃から生徒達と接している指導者と、前もって可能な限り詳しい情報交換をする必要があると感じた。
 学校で実施する場合、生徒達の事をよく知るその学校の指導者が、この『教材』の中にある「利用法」を参考に、自由にアレンジして使用することが望ましいと思われる。

● これからの期待や展望

 この『教材』(15編×4セット=60編)は、【体験・生き方】や【体験・支援活動】などのテーマに合わせて必要数の小論文を選ぶことも可能である。あるいは、防災学習や復興学習・支援活動・国際理解・生き方・地域の特性・環境学習などに関する多様な小論文があるので、あるテーマに特化した情報提供やワークショップ等を行ったうえで、適する内容の小論文を必要数選び朗読することも可能である。

 以上のように、この『教材』(参考資料①の利用方法はいろいろと考えられる。共通するのは、「東日本大震災を体験した子供達の想いや考え・感情を知ることができ、知ることにより『自分事』としてどのように行動していくのかを考える場を提供できる」ことである。

 

 

 

● 実践中の写真

※写真の掲載についてご本人の許可をいただいています。

           

【会員レポート】『東日本大震災を体験した子供達の想い・考えを、次世代に伝える教材』 実践例①

【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。

 


 

情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古高等学校定時制 講師) 会員
活動実施日:2025年5月27日
情報提供日:2025年9月5日
連絡先:TEL. 0193-63-6448
    MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp

 

準備の段階

 

● 実践・実施のきっかけや経緯

 東日本大震災発生当時、まだ小さかったり生まれていなかった子供達が高校へ入学してくることが予想され、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
 一つの方法として、インド洋大津波と東日本大震災に関連する162編の小論文の中から選んだ多様な視点の60編の小論文を『教材』(参考資料①参照)とすることで、被災地の生徒達の想いや考えを現在や未来の中学生・高校生、あるいは震災を体験していない人々に引き継ぎ、新たな行動へつなげていきたいと考えている。
 今回、岩手県立久慈翔北高校において、介護福祉コース19名(2年生8名、3年生11名)と岩手県立北桜高校介護福祉コース11名(2年生)の「交流学習スクール」、および「いわての復興教育スクール」の一環として行われた震災学習(タイトル:「東日本大震災を経験した高校生たちの思いを継ぐ」)で、初めてこの『教材』を使用した。

● 計画や準備で気をつけたこと

 元になる資料(2021年11月22日付けの【会員レポート】など8編を参照)は、岩手県沿岸の被災地にある5つの高校(宮古、山田、久慈東、岩泉、宮古北)において、震災当時高校2年生だった生徒から保育園・幼稚園の年長だった幼児まで(12学年分)の震災を体験した高校生が、震災時や震災復旧・復興時にどのように想い・考えたかを600字の小論文として記載したものである。

 震災学習を実施するにあたり、指導しなければならない立場の方から「何をしたら良いか分からない」ということを聞くことがある。また、震災から7年後に、当時高校1年生の生徒が小論文の中で以下のように述べている。
 「(前略)・・小学校の先生が3月11日になると津波の話をするそうですが、経験をしていない子供達や記憶がほとんどない子供達にどのように東日本大震災の事を伝えようか戸惑うらしいです。また、当時内陸の方の小学校に勤務していた先生方も多く、子供達に当時どのような事があったのかを伝える人も少なくなってきているそうです。・・(後略)」。その生徒は続けて、「高校生の私達や中学生が、・・説明したり、その時の気持ちなどを分かりやすく語ったりして、・・」と述べている。
 岩手県では、『岩手の復興教育推進事業』の中で、「岩手の復興教育スクール」と「交流学習スクール」「震災学習列車活用スクール」という形で震災学習・防災教育を実施しているが、予算の確保や実施計画の作成等、指導者の負担が大きいのではないかと懸念される。また、震災学習を指導する側も年齢を重ねていくため、いつか指導できなくなり、震災を体験した子供達も高校を卒業していくため、後輩達に伝えることができなくなっている。
 以上のことから、東日本大震災を体験した子供達の想いや考えが形として残るように、そして「いつでも誰でも簡単に使用できる」ことを常に心がけて『教材』を作成した。

 

実践の段階

 

● 実施した内容

1) 『インド洋大津波と東日本大震災の比較』の授業内容の紹介(約45分間)

 東日本大震災の翌年(2012年)に、JICA東北主催の教師海外研修でインドネシア・アチェ州を訪れる機会を得た。当地は、2004年12月26日に発生したインド洋大津波(スマトラ島沖地震)の被災地で、アチェ州だけで約16万人が亡くなっている。この研修で得た知見や帰国後に調査した日本における「自然環境を活用した防災・減災」などをまとめ、スライドや動画上映を中心とした50分×2コマの授業を実施している。
 今回、その授業内容(「アチェの状況」や「マングローブの役割」「日本の防災林」等)について約45分間に短縮して参加生徒達に紹介した。そのうえで、授業内容等の「振返りプリント」の作成・掲示・配布や、それらのプリントを参考にした「600字の小論文」の課題の提出を岩手県沿岸の5つの高校で実施したことを説明した。

2) 現役高校生(久慈翔北高校生8名)による小論文(9編)の朗読(約20分間)

 今回、8年前に久慈東高校(久慈翔北高校の前身)で実施した出前授業の際に生徒達に書いてもらった小論文3編を含む『9編』(参考資料②参照)について、久慈翔北高校介護福祉コース2年生の8名に朗読してもらった(1人各1編、1人だけ2編朗読)。

ワークショップ(計30名参加) ~ファシリテーター:久慈翔北高校 菅原彩教諭~(約30分間)
朗読してもらった9編の中から1編を各自選び、「A:あなたが共感したのは、どういう所ですか?」と「B:選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?」、および「感想」(参考資料③『朗読された小論文の感想』参照)を、別紙用紙①に書き出してもらった。
その用紙をもとに、4~5人のグループごとに、別紙用紙②を使いながら、「これからあなたができることは何ですか?」について話し合ってもらった。
(※ 別紙用紙②では、最初に「クロスロード」を行い話し合いに慣れた後で、「私もこんな体験をした。」、「こんなことをしたい。」、「こんなことをしている。」、「こんな方法もある。」、「能登半島地震、洪水の被災地にこんなことができる。」、等々について意見を出し合う。)
話し合った内容について、各グループの代表者から短く発表してもらった。

課題の配付

 授業の最後に、別紙用紙③(「原稿用紙」)を配付し、朗読した9編の小論文の中から各自が選んだ1編について、「A:あなたが共感したのは、どういう所ですか?(160字以上~200字以内)」と「B:あなたが選んだ小論文を読み、これからあなたができることは何ですか?(260字以上~300字以内)」について書き、後日提出してもらった。

) 想いや考えの共有

 後日、提出された小論文のうちのいくつかを、選んだ小論文と一緒に掲載したプリントを作成・配付し、参加生徒全員で想いや考えを共有した(参考資料④『想いや考えの共有』参照)。

 

● 実践中や、実施後の参加者の反応

 実施した内容の1)「授業内容の紹介」

 「東日本大震災」と生徒たちがまだ生まれていない約20年前に発生した「インド洋大津波」を比較して紹介し、2つの自然災害の共通点や相違点を比較検討したことで、防災・減災や復興、国際支援活動等について興味深く聴いてくれていることを感じた。また、インドネシアのマングローブ林と日本の防災林を比較しながら「自然環境を活用した防災・減災」という視点からの防災・減災について紹介することにより、「身近な自然環境」の重要性を理解してもらうことができた。

実施した内容の2)「小論文(9編)の朗読」

 声に出して朗読することにより、被災した当時の子供達の想いや考え、そして感情が、読み手の生徒達に、より強く伝わったと思われる。たとえば、当日の震災学習を取材していたNHK盛岡放送局制作の放映番組の中で、朗読した生徒の一人が『言葉ひとつひとつに 想いがちゃんとあるんだなって思いながら読むことで 気持ちをくみ取って読もうと思いました。』と述べている。
 また、子供の頃に実際に東日本大震災を体験した地域の先輩たちの高校時代の想いや考え・感情を、同じ年頃の現役の高校生達が「自分事」として思い浮かべながら朗読することにより、聴く側の生徒達にも強く響いたと思われる。(参考資料③、および⑤(新聞記事):『岩手日報』令和7年6月4日付より「岩手日報社の許諾を得て転載しています。」)

実施した内容の3)「ワークショップ」

 9編の小論文の中から自分の心に引っかかった1編を選び、「共感したところ」と「これからできること」を書き出したことで、グループワークにおける発言がスムーズになったと思われる。また、互いの考えや感じたことを話し合い、多様な視点から「自分がこれからできること」を考える良い機会になったと思われる。

 講師の話を聞いて「分かったつもり」になるのではなく、地域の先輩たちの想いや考え・感情を理解したうえで、グループワークの中で互いの考えや感じたことを話し合うことは、より理解を深め、次なる行動へつながるものになると考える。

実施した内容の4)「課題の配付」と5)「想いや考えの共有」

 ワークショップの最後に各グループからの短い発表はあったが、形として残らないと「想いや考えの共有」は難しいと思われる。ワークショップ後に、自分の心に引っかかった1編について自らが書き出した「共感したところ」と「これからできること」、そしてグループワークで話し合うことで気づいた事や閃いた事をまとめて文章にしていく過程が重要である。

継続の段階

 

● 課題に感じたこと

 今回の実践からも、朗読するのは現役の高校生、もしくは中学生であることが望ましいと感じた。
 しかしながら、例えばこの『教材』を朗読することが困難な生徒がたくさんいるクラスで実施する場合や、NPO等が一般の参加者を対象に実施する場合等、それが難しい場合が想定される。前者の場合には、朗読ではなく黙読、あるいは教師が朗読してから“実施した内容の4)「課題の配付」と5)「想いや考えの共有」”を実施する方法や、後者の場合には、主催者が朗読してからワークショップを実施する方法でも良いと思われる。
 現在、現役高校生等の朗読を録音しておいた音源を利用することができるように準備し、現場で流すという方法も試してみたいと考えている。

● これからの期待や展望

 東日本大震災の被災地だけではなく、どの地域の誰でも簡単に利用できる『教材』にしたいと考えている。“実施した内容の1)「授業内容の紹介」”を実施しないで、最初から朗読とワークショップを行うことも可能である。また、最初から朗読して、ワークショップなしで“実施した内容の4)「課題の配付」と5)「想いや考えの共有」”を実施することも可能である。
 この『教材』(15編×4セット=60編)は、【体験・生き方】や【体験・支援活動】などのテーマに合わせて必要数の小論文を選ぶことも可能である。あるいは、防災学習や復興学習・支援活動・国際理解・生き方・地域の特性・環境学習などに関する小論文があるので、あるテーマに特化した情報提供やワークショップ等を行ったうえで、適する内容の小論文を選び朗読することも可能である。

 以上のように、この『教材』の利用方法はいろいろと考えられる。共通するのは、「東日本大震災を体験した子供達の想いや考え・感情を知ることができ、知ることにより『自分事』としてどのように行動していくのかを考える場を提供できる」ことである。

 もし、この『教材』(参考資料①)の電子データが欲しい方がいれば、ptf60-j-ogasawara(アット)iwate-ed.jp まで連絡をください。メール添付で(別紙用紙①~③も含めて)提供できます。

 また、【特別セレクト①】(15編)【特別セレクト②】(15編)【体験・支援活動編】(15編)【体験・環境編】(12編)、そしてインド洋大津波に関する「授業内容の紹介」を受けなければ伝わりにくい内容を含む小論文を除いた【東日本大震災関連に限定編】(15編)もあるので、お問い合わせください。

 

 

● 実践中の写真

※写真の掲載についてご本人の許可をいただいています。

           

【会員レポート】『3.11 語り継ぐ若き記憶』 -東日本大震災を体験した子供達の想い・考えを、次世代に伝える教材の紹介-

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情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古高等学校定時制 講師) 会員
活動実施日:2024年3月3日
情報提供日:2024年4月23日
連絡先:TEL. 0193-63-6448
    MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp

 

準備の段階

 

● 実践・実施のきっかけや経緯

 東日本大震災発生当時、まだ小さかったり生まれていなかった子供達が高校へ入学してくることが予想され、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
 一つの方法として、インド洋大津波と東日本大震災に関連する百数十編の小論文を教材とすることで、辛い気持ちを乗り越えて小論文を書いてくれた被災地の生徒達の想いや考えを現在や未来の中学生・高校生、あるいは震災を体験していない人々に引き継ぎ、新たな行動へ繋げていきたいと考えている。
 今回、東日本大震災の被災地である岩手県宮古市の「市民交流センター」主催で、2024年3月3日に実施された「市民交流まつり」(参考資料①(チラシ)を参照)の中で、2011年から現在まで行っている自然災害への防災・減災や支援活動等に関する教育実践を市民の方々に紹介する機会を得たので、その様子を報告する。

● 計画や準備で気をつけたこと

 元になる資料(2021年11月22日付けの【会員レポート】など7編を参照)は、岩手県沿岸の被災地にある5つの高校(宮古、山田、久慈東、岩泉、宮古北)において、震災当時高校2年生だった生徒から保育園・幼稚園の年長だった幼児まで(12学年分)の震災を体験した高校生が、震災時や震災復旧・復興時にどのように想い・考えたかを600字の小論文として記載したものである。それらを6つのテーマ別に30編にまとめることで、被災地の子供達の想いや考えを次世代や体験していない人達に分かりやすく継続して伝えていけるように教材化した。また、3年前より『短縮版』(2023年10月4日付けの【会員レポート】など参照)を作成し、使いやすいように工夫して実践している。

 

実践の段階

 

● 実施した内容

1) 『インド洋大津波と東日本大震災の比較』の授業内容の紹介(35分間)

 東日本大震災の翌年(2012年)に、JICA東北主催の教師海外研修でインドネシア・アチェ州を訪れる機会を得た。当地は、2004年12月26日に発生したインド洋大津波(スマトラ島沖地震)の被災地で、アチェ州だけで約16万人が亡くなっている。この研修で得た知見や帰国後に調査した日本における「自然環境を活用した防災・減災」などをまとめ、スライドや動画上映を中心とした50分×3コマの授業を実施している。
 今回、その授業内容(「アチェの状況」や「マングローブの役割」「日本の防災林」等)について約35分間に短縮して市民に紹介した。そのうえで、授業内容や生徒の感想・質問等を掲載した20枚前後の「振返りプリント」の作成と掲示・配布、そのプリントを参考にした「約600字の小論文」の課題の提出、等の教育実践の方法について説明した。

2) 現役高校生(宮古高校放送部の生徒4名)による小論文(15編)の朗読(約30分間)

 教材として作成した『短縮版』を一部改変した「特別編集版(15編)」(参考資料②)を、宮古高校放送部の女子生徒4名に代わるがわる朗読してもらった(参考資料③(新聞記事)を参照)。
 3月3日に実施されたこのイベント以前に取材・掲載された新聞記事によると、朗読した生徒達は、「(13年前、4才だった4人は揺れや避難した経験はかすかに覚えているが、)災害のおそろしさは理解していなかった」、「いつ、どんな災害があるか分からない。経験者の話を多くの人に伝え、守れる命が増えればいい」、「高校生が話すことに意味があると思う。後世にどうつないでいけばいいか考えながら読みたい」等と述べている。
参考資料③(新聞記事):『岩手日報』令和6年3月3日付より「岩手日報社の許諾を得て転載しています。」)
 後日、朗読をしてくれた宮古高校放送部の生徒4名に、「朗読をしてみて感じたことや想ったこと等を教えてください。」、「イベントに参加して、参考になったことや感想、あるいは実施方法等へのアドバイスがあれば記入してください。」という2つの質問に回答してもらった(参考資料④(朗読した生徒の感想など)を参照)。

 

● 実践中や、実施後の参加者の反応

 実施した内容の1)(授業内容の紹介)については、「東日本大震災」と多くの方が具体的内容を忘れていると思われる約20年前に発生した「インド洋大津波」を比較して紹介し、2つの自然災害の共通点や相違点を比較検討したことで、防災・減災教育や国際支援活動について興味深く聴いてくれていることを感じた。また、インドネシアのマングローブ林と日本の防災林を比較しながら「自然環境を活用した防災・減災」という視点からの防災・減災教育や環境教育について紹介することにより、「身近な自然環境」の重要性を理解してもらうことができた。
 実施した内容の2)(小論文(15編)の朗読)については、胸にせまるものがあり、とても感動的であった。子供の頃に実際に東日本大震災を体験した地域の先輩たちの高校時代の想いや考えを、同じ年頃の現役の生徒達が「自分事」として思い浮かべながら朗読する今回の試みは、地域に根ざした防災・減災教育においてとても有意義なものであった。特に、朗読してくれた宮古高校放送部の4名の生徒の感想等から、小論文を黙読するだけではなく声に出して朗読することの重要性を強く感じた。これは、朗読を聴く側にとっても同様の効果があったと思われる。
 司会の「市民交流センター」の担当者からは、「子供達の視点が抜けている面があった。子供達の想いや考えを大切にしていくための契機になったのではないか。」というコメントを頂いた。

継続の段階

 

● 課題に感じたこと

 当初は、上記『実施した内容』の次に、教材としての取り組み方法を参加者にワークショップ形式で体験してもらう企画であったが、会場の設備や時間的問題で今回は実施できなかった。別の機会にぜひ実施したいと考えている。

● これからの期待や展望

 被災地だけではなく、どの地域の誰でも活用できる教材にしていきたいと考えているので、実施した内容の1)(授業内容の紹介)が実施されなくても活用できる教材の作成を考えている。具体的には、「アチェの状況」や「マングローブの役割」に関する授業内容を受けての小論文もあるので、「授業内容の紹介」がなければ経緯が理解しにくい小論文を除いた『短縮版』を作成したい。加えて、ワークショップ形式の進行手順や使用する資料の作成も行いたいと考えている。
 また、実施した内容の2)(小論文(15編)の朗読)について、小学校(高学年向け)や中学校・高等学校等で実施する場合、その学校の児童・生徒の代表に朗読してもらうことが「自分事」として想い・考える契機になると思われる。しかしながら、それが難しい場合や学校以外でこの教材を使用する場合には、現役高校生などの朗読を録音しておいた音源を利用することができるように準備したい。

※参考資料①(チラシ)について、「宮古市市民交流センター」より転載の許諾をいただいています。

 

 

 

 

● 実践中の写真

※写真の掲載についてご本人の許可をいただいています。

           

【会員レポート】ぼうさいNURIE(オンライン防災自作のぬりえ活動)・プラ板で避難リュック作り(ワークショップ)

【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。

 


 

情報提供者:岡村 智樹(樹実防災株式会社)会員
活動実施日:2023年11月26日
情報提供日:2023年12月20日

 

準備の段階

 

● 実践・実施のきっかけや経緯

Facebookグループで活動しています「オンライン防災」のなかで、今年《ぼうさいNURIE》という企画を発足させ9月1日のプレスリリースを皮切りに各所で展開しています。子供たちに「怖がらせない防災」と、子どもがぬり絵をしながら保護者と一緒に防災のお話を直接するコンセプトで進んでいます。私事、準備期間から取り組みをしています。7月頃から静岡県内(静岡市、藤枝市、富士市、御殿場市)のマルシェやお祭り会場で開催し、通常防災イベントで実施するイメージがある活動を、もっと身近に防災を感じてもらうようにしています。今回の報告は、11月26日に岐阜県安八町で開催した「100人のお産展」の会場で実施した様子の写真を貼ります。
良く聞くのが「防災訓練すら来てくれない!」との話に、何気ない日常空間で防災を感じるきっかけがないのか模索をしています。

● 計画や準備で気をつけたこと

お産の写真展と防災を掛け合わせるのには、私は全く違和感はありませんでした。何故なら昨年度静岡市で実施した「お産の写真展~生きる」を2日間開催し、赤ちゃん目線の防災ミニ講座を実施した結果、多くの反響がありました。その話を聞いた岐阜県の仲間が、私の想いを岐阜県に引き継いだ形になっています。そこに私が今年から展開していますNURIEを入れた感覚でして、ほとんど計画も気を付けることもありませんでした。ゆういつ言えるのは、怖がらせない、自然体で防災の話になるのみです。

 

実践の段階

 

● 実施した内容

① ぼうさいNURIE(オンライン防災自作のぬりえ活動)

② プラ板で避難リュック作り(ワークショップ)

 

● 実践中や、実施後の参加者の反応

各自治体など防災イベントを実施しています。

私たちは、普段、制服に身を包んだ方々と会うと、距離を感じてしまいますが 、来場された3家族が消防隊員のご家族だったことで、いろいろお話が出来て親近感を得ることが出来ました。

消防隊員の方のご家族と一緒にぬりえをしたことが、その家族の防災意識を高める効果があったこと。どう災害に向き合って良いか分からない、奥様がとても喜ぶ姿は、これまで、市民と消防職員との間に感じていた隔たりを壊し良い経験となりました。

継続の段階

 

● 課題に感じたこと

《ぼうさいNURIE》は、NURIE大使という役を設けています。私はその一人なのですが、今まで記載した内容で展開できる人材の育成が課題と感じています。ただぬりえをするのではなく、様々な災害経験を持ちながら、「生きるための防災」を真剣に考えて頂ける方です。こども一人ひとりとその家族と向き合い、学校防災では出来ない「防災教育」になる事を望んでいます。

 

● これからの期待や展望

今年度の「ぼうさいこくたい2023」で大掛かりに仕掛けた結果、今では各種防災講座で会う方にNURIEを見せると10人に1人程度の割合で見たことあるとか聞いたことあるというお返事をいただきます。(先日の内閣府主催避難生活支援研修会場でデーター取り・・・参加者40人中5人が該当)
今年度末にかけて千葉県のららぽーとイベント会場や、愛知県蒲郡市の防災イベント会場で展開します。
現在は、宮城、栃木、東京、神奈川、静岡、愛知、岐阜、京都、広島、愛媛、熊本、沖縄の各都府県で3月の練習から現在まで24回開催しています。もっと多くの地域でそして海外にも展開したいと考えています。

● 実践中の写真

※写真の掲載についてご本人の許可をいただいております。

 

【会員レポート】東日本大震災を体験した子供達の想い・考えを、次世代に伝える教材の実施例(その4) -アンケート結果をふまえて-

【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。

 


 

情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古水産高等学校) 会員
活動実施日:2023年5月~2023年10月
情報提供日:2023年9月28日
連絡先:TEL. 0193-62-5550
    MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp

 

準備の段階

 

● 実践・実施のきっかけや経緯

 東日本大震災発生当時、まだ小さかったり生まれていなかった子供達が高校へ入学してくることが予想され、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
 一つの方法として、インド洋大津波と東日本大震災に関連する百数十編の小論文を教材とすることで、辛い気持ちを乗り越えて小論文を書いてくれた被災地の生徒達の想いや考えを現在や未来の中学生・高校生に引き継ぎ、新たな行動へ繋げていきたいと考えている。

● 計画や準備で気をつけたこと

 元になる資料(2021年11月22日付けの【会員レポート】参照)は、岩手県沿岸の被災地にある5つの高校(宮古、山田、久慈東、岩泉、宮古北)において、震災当時高校2年生だった生徒から保育園年長だった幼児まで(12学年分)の震災を体験した高校生が、震災時や震災復旧・復興時にどのように想い・考えたかを600字の小論文で記載したものである。それらを6つのテーマ別に30編にまとめることで、被災地の子供達の想いや考えを次世代や体験していない人達に分かりやすく継続して伝えていけるように教材化した。また、昨年度より『短縮版』(実践例も含めて40ページ)を作成し、使いやすいように工夫した。
 今回、昨年度より勤務している宮古水産高校の1年生(震災当時2~3才)を対象に、理科の科目である「科学と人間生活」の中で『インド洋大津波と東日本大震災の比較』というタイトルの授業を3回に分けて実施したうえで、以下のような取り組みを行った。

 

実践の段階

 

● 実施した内容

1) 授業内で実施したアンケート結果について

 1回目の授業を始める前に、次のようなアンケートを実施した。
 『現在のあなたは、「東日本大震災」や「津波」・「防災」というような言葉について、どのような意識をもっていますか。次の中から1つを選び〇をしなさい。
①考えたくない ②あまり考えたくない ③いろいろと考えたい ④関心が無い 』
 その結果を、生徒に配布した『振返りプリント』で以下のように掲載した。

 

▼『振返りプリント』の一例
 ・・・(前略)・・・。
 結果は下のグラフのようになりました。(参考として、山田高校における2016年度の結果と宮古北高校における2020年度の結果も掲載します。)
 宮古水産高校と他の2校(山田高校、宮古北高校)におけるアンケート対象者は、人数や学年構成・震災後の年数・被災状況等々が異なるので単純に比較はできませんが、一見して分かるのは、いずれの高校でも③の『いろいろと考えたい』が一番多いことです(山田高校:約45%、宮古北高校:約53%、宮古水産高校1年生:49%)。しかし、どの高校・どの年代でも「考えたくない」「あまり考えたくない」という人も少なからずいるので、震災によるストレスを感じている人も多いと言えます。宮古水産高校1年生に特徴的な点は「関心が無い」人が多いことでしょうか。これは宮水以外でも年々増えているようで、小さい頃から「震災」「震災」と言われ続けてきて嫌になっている人がいるのかも知れません。

 

2) 『短縮版』の資料の配布

 『短縮版』の中の「セレクト1」(15編×4セット、セレクト1~4の1つ)を夏休み前に配布し、課題として取り組んでもらった。前回(2023年2月24日付けの【会員レポート】参照)と同様に、冊子(目次も含めて7ページ(両面印刷で4枚))にして配布した(PDF版の資料①を参照)。

 15編それぞれについては、内容面から4つの分類を示し、生徒たちが1つの小論文を選びやすいように工夫した。4つの分類とは、『体験』(被災体験と伝承)、『環境』(身近な自然環境を活用した防災・減災)、『支援』(国際支援・国際交流)、『生き方』(これから私ができること)、とした。

 

3) 提出された課題をまとめたものを掲示・配布

 夏休み明けに提出された課題をまとめたものについてカラー版を各教室に掲示し、白黒版を1・2年生全員に配布したPDF版の資料②を参照)。

昨年度、3回の授業を実施した2年生についても、夏休み課題とした。)

 

▼ 実施結果の一例 

令和5年度 理科の夏休み課題(小論文)

 今回、2011年から2021年までの11年間に、5つの高校で収集した小論文の中から15編を選びました。そして、それらの小論文を皆さんに読んでもらった上で、1つの小論文を選んで、以下のA~Cの課題についてあなたの想いや考えを書いてもらいました。

 :あなたの選んだ小論文の筆者は、どういう想いでこの文章を書いたと思いますか? 
 あなたが共感したのはどういう所ですか? 
 :あなたが選んだ小論文を読み、これからあなたができることを述べなさい。

 なお、小論文を1つ選ぶ時の参考として、15編の小論文を内容別に、4つに分類しています。

 『体験』:被災体験と伝承
 『環境』:身近な自然環境を活用した防災・減災
 『支援』:国際支援・国際交流
 『生き方』:これから私ができること

 提出してもらった中から、「そんな想いもあるんだ」や「そういう視点もあるんだ」という内容の代表的な小論文を、皆さんにもお知らせします。(選んだ小論文も添付

 

(1)(令和5年度宮古水産高校1年 Mさん)(震災当時、3才)

A:「筆者は、どういう想いでこの文章を書いたのか?」
 筆者は、東日本大震災が起こったことはとても悲しい出来事だけど、自分の思い出の中で生きていてほしいという考えや、自分の手で町の魅力を伝えたいという考えなど、自分自身ができる気持ちや行動が大切だという想い。

B:「あなたが共感したのはどういう所ですか?」
 私が共感したのは、「たとえ亡くなっていたとしても、私の思い出の中で生きていてほしい」という所です。この文章は、生きている人全員に言える言葉だと思ったし、自分もその気持ちを大切にしないといけないと思ったから。

C:「選んだ小論文を読み、これからあなたができることは?」
 小論文を読み、共感した部分でもある『自分の思い出の中でずっと生きてほしい』から、亡くなった人のことを思い出すことが、これから私ができることの1つである。
 また、自分の命を自分で守ることができるための訓練などを積極的に行ったり、防災リュック等を準備する必要があると思う。自分の命を守れなければ、人の命を守ることはできないと思うので、できることは何でもしたい。そして、1人でも多くの命に助かってほしい。
 これから先、何が起こるか分からないけど、親からもらった命に感謝して、一日一日後悔のないように自分らしさを忘れずに生きてゆきたい。

選んだ小論文(震災当時、小1)『東日本大震災から十年目の今、私ができること』 体験・生き方

 東日本大震災から10年が経とうとしています。私は小学生の時、未来の田老を題材にした劇をしました。中学生の時は、「田老を語る会」をしました。「田老を語る会」では、被害状況や当時の様子・教訓などを、津波を経験したことのない人に伝えました。私ができることは、考えて、伝えていくことです。「田老を語る会」は、現在の中学生も行っています。私はそれをこれからも続けていってほしいと思います。
 私は震災で家族を2人亡くしました。当時まだ小学校1年生だった私は、そのことがよく理解できずにいました。ずっと2人の帰りを待っていました。そのことを思い出して泣くことが時々あります。亡くなった人のことを思い出すことも私にできることの1つです。たとえ亡くなっていたとしても、私の思い出の中で生きていてほしいと思うのです。
 私は絵を描くことが好きです。昔から絵で好きなものを表現することが好きでした。私はいつか、もっと絵を描く技術を上げて綺麗な田老の海を描きたいと思っています。現在の田老はお店は建ってきましたが、まだ人が少ないと思います。田老の魅力を知り、それをたくさんの人に広めてほしいと思います。私も自分の絵で田老の魅力を伝えられるように、田老の事をより好きになりたいです。

 

● 実践中や、実施後の参加者の反応

 理科の科目である「科学と人間生活」の中で『インド洋大津波と東日本大震災の比較』というタイトルの授業を3回に分けて実施したことで、震災当時2~3才だった生徒達の震災記憶の呼び覚ましと震災に関する新たな視点を提供することができた。また、授業に関する『振返りプリント』(全21枚)のカラー版を教室に掲示し、白黒版を生徒に配布することにより、震災被害の事実やさまざまな防災・減災の手法等を再確認してもらうことができた。
 さらに、教材化した『短縮版』の資料を元に、自分達と同年代の頃の地域の先輩達が大人とは違う視点から感じた想いや考えを知ることにより、自らの体験や学んだ知識と合わせ、自らの想いや考えを発展させることができた。

継続の段階

 

● 課題に感じたこと

 上記『実施した内容』について、対象者である宮古水産高校の1年生は、震災当時保育園・幼稚園入園前(2~3才)であったので、震災の記憶はほとんどないと考えられる。その後の復旧・復興時の体験や小中学校での学びがあったとは思うが、『▼振返りプリント』の一例を見て分かるように、震災記憶の風化は年月の経過と共に避けられないことであるのかも知れない。

● これからの期待や展望

 1回目の授業実施前(下左のグラフ)と『インド洋大津波と東日本大震災の比較』に関する3回の授業実施後(下右のグラフ)を比較すると、「③いろいろと考えたい」の比率が増加し、「④関心が無い・無回答」の比率が減少している。

 震災記憶の風化は、前述のように大きな課題である。しかしながら、震災被害の事実を知り、さまざまな防災・減災の手法を知り、さらに震災を体験した高校生たちの想いや考えを知ることで、震災記憶を継続していくことが可能であると思われる。
 今後、教材化した資料を各地の中学・高校の「総合的な学習(探究)の時間」やNPOのワークショップ等でより多くの人に活用してもらうことにより、南海トラフ大地震をはじめとする自然災害が想定されている地域だけではなく、想定されていない地域も含めたさまざまな地域における防災・減災教育や復興教育等に寄与していきたいと考えている。 

 

 

● 実践中の写真

           

【会員レポート】東日本大震災を体験した子供達の想い・考えを、次世代に伝える教材の実施例(その3) -『短縮版』の活用-

【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。

 


 

情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古水産高等学校) 会員
活動実施日:2022年12月~2023年1月
情報提供日:2023年2月15日
連絡先:TEL. 0193-62-5550
    MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp

 

準備の段階

 

● 実践・実施のきっかけや経緯

 東日本大震災発生当時、まだ小さかったり生まれていなかった子供達が高校へ入学してくことが予想され、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
 一つの方法として、インド洋大津波と東日本大震災に関連する百数十編の小論文を教材とすることで、辛い気持ちを乗り越えて小論文を書いてくれた被災地の生徒達の想いや考えを現在や未来の中学生・高校生に引き継ぎ、新たな行動へ繋げていきたいと考えている。

● 計画や準備で気をつけたこと

 元になる資料(2021年11月22日付けの【会員レポート】参照)は、岩手県沿岸の被災地にある5つの高校(宮古、山田、久慈東、岩泉、宮古北)において、震災当時高校2年生だった生徒から保育園年長だった幼児まで(12学年分)の震災を体験した高校生が、震災時や震災復旧・復興時にどのように想い・考えたかを600字の小論文で記載したものである。それらを6つのテーマ別に30編にまとめることで、被災地の子供達の想いや考えを次世代や体験していない人達に分かりやすく継続して伝えていけるように教材化した。
 今回、上記資料は情報量が多すぎる(120ページ)ため使いにくいところがあったので、『短縮版』(実践例も含めて40ページ)を作成し、現在勤務している宮古水産高校の1・2年生に理科の冬休み課題として取り組んでもらった。

 

実践の段階

 

● 実施した内容

1) 『短縮版』の資料の配布

 前回までは6つのテーマのうちから1つのテーマを選び、小論文30編を生徒に配布していたが、今回は半分の15編(目次も含めて7ページ(両面印刷で4枚))にして配布した。また、15編それぞれについて内容面から4つの分類を示し、生徒たちが1つの小論文を選びやすいように工夫した。
 4つの分類とは、『体験』(被災体験と伝承)、『環境』(身近な自然環境を活用した防災・減災)、『支援』(国際支援・国際交流)、『生き方』(これから私ができること)、とした(PDF版の資料を参照)。
 なお、今回使用した15編の他に、15編×3セット、合わせて4セット(全て内容が異なる計60編)の資料を準備し、在学中に少なくても4回、長期休業中の課題として活用できるようにした。

2)提出された課題をまとめたものを掲示・配布

 冬休み明けに提出された課題をまとめたものについてカラー版を各教室に掲示し、白黒版を1・2年生全員に配布した(PDF版の資料を参照)。

 

▼ 実施結果の一例 

令和4年度 理科の夏休み課題(小論文)

 今回、2011年から2021年までの11年間に、4つの高校で収集した小論文の中から15編を選びました。そして、それらの小論文を皆さんに読んでもらった上で、1つの小論文を選んで、以下のA~Cの課題についてあなたの想いや考えを書いてもらいました。

 :あなたの選んだ小論文の筆者は、どういう想いでこの文章を書いたと思いますか? 
 あなたが共感したのはどういう所ですか? 
 :あなたが選んだ小論文を読み、これからあなたができることを述べなさい。

 なお、小論文を1つ選ぶ時の参考として、15編の小論文を内容別に、4つに分類しています。

 『体験』:被災体験と伝承
 『環境』:身近な自然環境を活用した防災・減災
 『支援』:国際支援・国際交流
 『生き方』:これから私ができること

 提出してもらった中から、「そんな想いもあるんだ」や「そういう視点もあるんだ」という内容の代表的な小論文を、皆さんにもお知らせします。(選んだ小論文も添付

 

(1)(令和4年度宮古水産高校2年 Aさん)(震災当時、保育園年中)

A:「筆者は、どういう想いでこの文章を書いたのか?」
 今後、いつ災害が起きても大丈夫なように、自分の経験した事を伝えていくことが大切だという想いで、筆者はこの文章を書いたと思います。

B:「あなたが共感したのはどういう所ですか?」
 私も重茂出身で、とてもこの文章に共感しました。震災前から小学生がやっていた劇の「かがやく海の重茂に」をやっていたから犠牲者が少なくて済んだんじゃないかというのは、私も共感できました。

C:「選んだ小論文を読み、これからあなたができることは?」
 私も震災を5歳の頃に経験したことがあります。その時は、何も分からない状態だったし、どうすれば良いか分からなくてとても怖い思いをした覚えがあります。その当時の私でも震災はすごく恐ろしいものだと分かるくらい怖かったです。
 あの時は、たくさんの支援に助けられたのを覚えています。多くの地域のたくさんの方から支援物資などを貰い、すごく嬉しかったのを今でも覚えています。私の住んでいる町は海がとても近くにあり、漁師がたくさんいる町で、震災の時はみんなで助け合って乗り越えました。私も誰かの役に立てるような人材になっていきたいと思います。

 

選んだ小論文(震災当時、中2)『3.11から四年目の今、私ができること』    体験・生き方

 私は、非常に海が近い小さな集落に住んでいました。しかし、東日本大震災によってこの集落は全滅してしまい、現在も仮設住宅で生活しています。震災後、その集落は災害危険区域に指定され、家を建ててはいけないことになっています。再び同じような被害を受けないための対策の一つです。この地域は、明治三陸大津波や昭和三陸大津波でも多くの被害を受けました。このことを後世に伝えるために先人は、津波到達地点を示した石碑と、二度と多くの犠牲者をださないように「此処より下に家を建てるな」と書かれた石碑を後世に残してくれました。この石碑については、これからも伝える必要があると思います。また、小学校で1年おきに行われる、昭和三陸大津波をテーマとし、当時の様子を台本にした全校表現劇「かがやく海の重茂に」もずっと伝えていくべきだと思います。私たちは、この劇のおかげで早いうちから過去にどのようなことがあったのか分かり、津波の恐ろしさを理解することができました。犠牲者が少なかったのは、これが理由であるかもしれません。
 私は先人がしてきたように、後世へ自分が体験したこと全てを伝えていきたいと思います。二度と犠牲者を出さないために。震災後に建てられた石碑にはこのように記されています。
 『後世への訓戒 大地震の後には津波が来る とにかく高い所に逃げろ 住宅は津浪浸水線より高い所に建てろ 命はてんでんこ』

 

● 実践中や、実施後の参加者の反応

 東日本大震災に対して、自分達と同年代の頃の先輩達が、大人とは違う視点から感じた想いや考えを知ることで、自らの体験や学んだ知識と合わせ、自らの想いや考えを発展させることができたと思われる。

継続の段階

 

● 課題に感じたこと

 上記『実施した内容』について、対象者である宮古水産高校の生徒達は、震災当時保育園年中・年少であったので、幼いながらも震災の記憶や、その後の復旧・復興時の体験や小中学校での学びがあったと思われる。そのため、地元の身近な先輩達の想いや考えに共感する点が非常に多かったと考えられる。それは、被災地の子供達の想いや考えを、被災地の次世代の子供達につないでいくという面で非常に効果的であるが、反面、他の地域の子供達に伝わるかどうか一抹の不安を感じている。
 しかしながら、中学・高校という多感な時期の子供達はもちろん、多くの人が共感力や想像力を持っていることも疑いのないことなので、この教材が防災・減災教育や復興教育に役立つことを信じたい。

● これからの期待や展望

 今回使用した『短縮版(セレクト4)』は、内容的にも分量的にも生徒達にとって適切であったと思われる。また、東日本大震災について触れられたくないと考えている生徒もいるので、そういう生徒にとっては震災と直接関係がない『支援』や『環境』に関する小論文を選ぶことができた点も良かったと思われる。
 今後、教材化した資料を各地の中学・高校の「総合的な学習(探究)の時間」やNPOのワークショップ等でより多くの人に活用してもらうことにより、南海トラフ大地震をはじめとする自然災害が想定されている地域だけではなく、想定されていない地域も含めたさまざまな地域における防災・減災教育や復興教育等に寄与していきたいと考えている。

● 実践中の写真