【会員レポート】では、本協会会員の皆さまから寄せられた防災教育実践報告などをご紹介しています。掲載をご希望の方は、事務局まで情報をお寄せください。また、レポートを掲載された方へのご相談や講師派遣依頼につきましても、事務局までお気軽にお問い合わせください。
情報提供者:小笠原 潤(岩手県立宮古高等学校定時制 講師) 会員
情報提供日:2026年10月28日
連絡先 :TEL. 0193-63-6448
MAIL. ptf60-j-ogasawara(アットマーク)iwate-ed.jp
準備の段階
● 実践・実施のきっかけや経緯
東日本大震災発災から15年を経過し、震災当時生まれていなかった子供達が中学校や高校に入学してくる現在、地域に根ざした防災・減災についてどのようにして伝え、考えてもらうかを工夫していく必要を感じていた。
● 計画や準備で気をつけたこと
東日本大震災が発生した2011年から2021年まで、被災地域にある5つの高校(宮古、久慈東、山田、岩泉、宮古北)において、2012年12月にインドネシアのアチェ州を取材したうえで『インド洋大津波と東日本大震災の比較』というタイトルで、防災・減災や復興、国際理解、環境問題等について情報を提供する授業やプリント学習を実施してきた。その中には、震災当時高校2年生だった生徒から保育園年長だった幼児まで(12学年分)の生徒達の震災時や震災復旧・復興時の想いや考えが、授業の内容をふまえた600字の小論文という形で多数記録されている。
これまで、多様な視点の小論文を現役の高校生に『朗読』してもらうことにより、被災した当時の子供達の想いや考え、そして感情が、読み手の生徒達はもちろん聴く側の生徒達により強く伝わる授業を実践してきた(2025年9月16日【会員レポート】と2025年12月3日【会員レポート】、および2026年7月17日【会員レポート】、3編を参照)。また、2026年10月1日【会員レポート】では、生徒ではなく教員が『朗読』することでも、聞く側の生徒達に被災した当時の子供たちの想いや考え・感情が強く伝わることを実証できた。
これらの実践は、高校の『総合的な探究の時間』や、「地震」や「津波」・「防災」などを取り上げている理科の『地学基礎』、および『科学と人間生活』の地学分野の授業で行っていた。
今回、高校の理科の科目である『生物基礎』と『生物』で扱っている「生態系サービス」に関連する内容を含む小論文を多めに選び、【インド洋大津波と東日本大震災の比較 + 生態系サービス】版とした。
実践の段階
● 実施した内容
1) 作成した教材
中学生・高校生向け『理科の授業で使える教材(震災学習、防災学習)』【インド洋大津波と東日本大震災の比較 + 生態系サービス】版(15編)(参考資料①)を作成した。(参考資料①に関連した別紙資料3「グループ討議」(改訂版)も掲載。)
2) これまでに工夫した内容
2026年4月27日【会員レポート】(中学生・高校生向け『写真付き教材』)と同様に、全ての小論文の1編ずつに2枚の写真が付いていることにより、『インド洋大津波(2004年発災)』や『東日本大震災(2011年発災)』、および『生態系サービス』に関して、被災者である生徒達の想いや考え・教訓などがイメージしやすくなっている。また、地名や読み方が複数ある漢字等に「ふりがな」を付けたことで、『朗読』しやすくなっている。
3) 今回、工夫した内容
15編の小論文の1編ずつに付いている2枚の写真の「解説」を、各小論文の次ページに掲載している。また、2枚の写真に加えて、小論文や「解説」の内容を補足するスライド写真1枚を、参考資料として掲載している。
写真の「解説」を記載するにあたり特に留意したのは、『インド洋大津波』に関連した写真について国際理解や支援活動に関して分かりやすく「解説」することと、『生態系サービス』に関連した写真について具体例を示す等の工夫をして理解しやすく「解説」することである。
なお、各小論文に付いている3枚の写真(3枚×15編=計45枚の写真)については、参考資料②『写真(PDF版)』として1枚ずつ映写することができる。『朗読』を実施する前の「導入」として、必要な写真を映写しながら「解説」することも可能である。
『生態系サービス』とは“豊かな生態系から受けている恩恵”のことであるが、その中でも防災・減災に関して『生態系を活用した防災・減災:Eco-DRR(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)』という考え方がある。これは、「生態系の保全・再生を通じて防災・減災や生物多様性を含めた地域の課題を複合的に解決しようとする」ものである。
(引用:環境省自然環境局生物多様性センター「生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)の基礎情報」https://www.biodic.go.jp 2006年9月24日)
具体的には、「洪水緩和に向けた湿地の保全・再生」や、「土砂災害の防止や水源涵養を目的とした森林整備」、「沿岸域の海岸防災林や河川の水害防備林の保全」などがある。それらによりさらに、「地域に自然と触れ合う場を提供するといった社会的な効果」や、「エコツーリズムの実施等による経済的な効果」、さらに海岸防災林やマングローブ林などの森林による生物多様性の保全や、二酸化炭素の吸収源(温室効果の抑制)や酸素の発生源・水質浄化、などの多様な効果も期待できる(「」内の太字筆者)。
● 実施中や実施後の参加者の反応
この教材を用いた授業はまだ実施していない。しかし、この教材を作成するにあたり、被災地域にある5つの高校で実施してきた授業の中で、防災・減災や復興、国際理解や支援活動、「生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)」について生徒達(子供達)に伝え、そしてプリント学習を通して一緒に考えてきた。
そのような教育実践の中で子供達が書いてくれた小論文に関連する「写真」や「解説」を掲載することは、この教材を用いた授業を実際に行う時に、小論文の内容をより深く理解し、書いてくれた子供達の想いや考え・感情をイメージするために役立つと考える。
継続の段階
● 課題に感じたこと
中学校の理科の教科書では『生態系サービス』という語句は出てこないかも知れない。しかしながら、中学校学習指導要領(平成29年告示)の「防災を含む安全に関する教育」の中で、理科第2分野では「自然の恵みと火山災害、地震災害」や「自然の恵みと気候災害」、「地域の自然災害について、総合的に調べ、自然と人間との関わり方について認識すること」などが挙げられている(「」内の太字筆者)。
これらは、Eco-DRR(生態系を活用した防災・減災)の考え方と一致するものだと考えられる。
● これからの期待や展望
中学校学習指導要領の「防災を含む安全に関する教育」を読んでいて、「理科」や「総合的な学習の時間」だけではなく、中学校の社会科地理的分野(「日本の地形や気候の特色、海洋に囲まれた日本の国土の特色、自然災害と防災への取組などを基に、日本の自然環境に関する特色を理解すること。」、「幾つかの区分した日本のそれぞれの地域について、その地域的特色や地域の課題を理解すること。」など)でもこの教材を活用できるのではないかと感じた(「」内の太字筆者)。
同様に、高校においても「理科(地学分野、生物分野)」や「総合的な探究の時間」だけではなく、「地理総合(自然環境と防災、など)」や「地理探究(自然環境、持続可能な国土像の探究、など)」、あるいは自然災害とは直接の関係はないが、「公民(国際交流、支援活動、生き方、など)」、「国語(朗読、グループ討議、作文、など)」でも活用できるのではないかと思う。
この『教材』の利用方法はいろいろと考えられるが、共通するのは「東日本大震災を体験した子供達の想いや考え・感情を知ることができ、知ることにより『自分事』としてどのように行動していくのかを考える場を提供できる」ことである。
● 実践中の写真




















